オーストラリアの医療保険制度とは?メディケア・民間医療保険・OSHC・ビザ別加入条件まで徹底解説
オーストラリアの医療制度は、公的医療保険であるメディケア(Medicare)を土台にしながら、民間医療保険、海外留学生向けのOSHC、就労・一時滞在者向けのOVHCなど、在留資格や居住資格によって利用する制度が分かれています。
オーストラリア国民や永住者であれば、原則としてメディケアへ加入し、GP、専門医、検査、公立病院などの医療費について国から給付を受けます。一方、学生ビザや多くの就労・ビジネス系一時滞在ビザの保有者は、原則としてメディケアの一般加入対象ではなく、ビザ条件に応じた民間医療保険を用意する必要があります。
この点は日本の制度と大きく異なります。日本では、一定期間以上日本に居住する外国人も、会社員であれば健康保険、その他の居住者であれば国民健康保険へ原則加入します。これに対し豪州では、納税・就労・居住をしていても、一時滞在ビザであるという理由だけでメディケアの一般対象外になることがあります。
歴史的にも制度は変化してきました。1988年末にはHealth Insurance Actの「Australian resident」の定義が変更され、Temporary Entry Permitを持つ一時滞在者は原則としてメディケア対象外となりました。海外留学生については1989年3月にOverseas Student Health Cover(OSHC)が導入され、1993年7月1日から全海外留学生がOSHC制度へ統一されました。旧Subclass 457 Business (Long Stay)ビザでは、2009年9月14日から健康保険維持義務が明確なビザ条件となりました。
この記事では、メディケアに加入できる条件、学生・就労ビザが一般のメディケア対象外となった経緯、OSHC・OVHC、一般の民間医療保険、Medicare Levy Surcharge、Lifetime Health Cover、日本の健康保険制度との違いまで、旅行情報ではなくオーストラリアの医療保険制度を紹介するレポートとしてまとめます。
本情報の注意事項
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オーストラリアの医療保険制度とは?


オーストラリアの医療制度は、メディケアを中心とするPublic Systemと、Private Health Insuranceを利用するPrivate Systemの二層構造です。
メディケアは1984年に導入された全国的な公的医療保険制度で、対象者はGPや専門医、検査、公立病院などについて国から給付を受けられます。
ただし、日本の健康保険のように「国内居住者であれば基本的に全員加入」という制度ではありません。Temporary Visa Holderの多くはメディケアの一般対象ではなく、自費または民間保険を利用します。
民間医療保険には、大きく分けて、メディケア対象者向けのHospital Cover・General Treatment(Extras)と、一時滞在外国人向けのOverseas Visitors Health Cover(OVHC)、留学生向けのOverseas Student Health Cover(OSHC)があります。
| 制度 | 主な対象 | 主な役割 |
|---|---|---|
| Medicare | 市民・永住者等 | 公的医療保険。 |
| Private Hospital Cover | 主にMedicare対象者 | 私立病院、医師選択等。 |
| Extras Cover | 主にMedicare対象者 | 歯科、眼鏡、理学療法等。 |
| OSHC | Student Visa | 留学生向け必須医療保険。 |
| OVHC | 就労・訪問等のTemporary Visa | Medicare対象外の医療費を補う。 |
このため、豪州で医療保険を考える際は「どの保険が一番よいか」より先に、「自分はメディケアEligible Personか」「ビザに健康保険条件が付いているか」を確認する必要があります。
メディケアに加入できる人
Services Australiaは、豪州に居住し、一定の法的資格を持つ人をメディケア加入対象としています。
市民・永住者
基本的な対象は、オーストラリア市民、ニュージーランド市民、オーストラリア永住者です。
永住ビザを取得し豪州に居住する人は、Services Australiaへ登録手続きを行うことでMedicare Cardを取得できます。
豪州国民であっても長期間海外に生活している場合などには居住要件の確認が行われ、海外居住期間によっては帰国後に再登録が必要になることがあります。
永住権申請者
まだ永住者でなくても、一定のPermanent VisaまたはPermanent Protection Visaを申請中で豪州に住んでいる人は、条件を満たせばメディケアへ加入できます。
代表的には、永住ビザ申請中で、現在のビザに就労権がある人、または豪州市民・永住者・豪州居住ニュージーランド市民である配偶者、親、子などとの一定の関係を証明できる人です。
パートナー・ビザでは、Temporary Partner Visaを取得した日ではなく、対象となるPermanent Visa Applicationを行った日がメディケア資格開始日となる場合があります。
一部の一時滞在者
Temporary Visa Holderであっても、Ministerial OrderによりEligible Personとして扱われる一部のクラスがあります。
例えば特定の人道・保護目的の一時ビザなどが該当します。したがって「Temporary Visaなら絶対にMedicare不可」という理解も正確ではありません。
相互医療協定
オーストラリアは一部の国とReciprocal Health Care Agreement(RHCA)を締結しています。
2026年時点では、英国、ベルギー、フィンランド、イタリア、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、アイルランド、スロベニア、スウェーデンなどが対象です。
対象国からの一時滞在者は、協定内容に応じてPublic Hospital、MBS、PBSなどの一部を利用できます。ただし国ごとに給付内容・期間が異なります。
日本とオーストラリアの間にはRHCAがないため、日本国籍というだけでメディケアを利用することはできません。
| 在留・資格 | Medicare | 補足 |
|---|---|---|
| 豪州市民 | 原則対象 | 居住要件あり。 |
| 永住者 | 対象 | 登録手続き必要。 |
| 一定の永住権申請者 | 対象の場合 | 就労権・家族関係等の条件。 |
| 日本人Student Visa | 原則対象外 | OSHCが基本。 |
| 日本人Temporary Work Visa | 原則対象外 | OVHC等が基本。 |
| RHCA対象国の訪問者 | 限定的対象 | 国別条件。 |
学生・ビジネス系ビザとメディケアの歴史


1988年の資格見直し
メディケア開始当初は、現在より「居住」の概念が広く、一定のTemporary Residentが公的医療制度へアクセスできる余地がありました。
Community Services and Health Legislation Amendment Act (No. 2) 1988によってHealth Insurance ActのAustralian Residentの定義が変更され、1988年12月26日以降、基本的には「豪州市民」または「Temporary Entry Permitではない入国資格を持つ豪州居住者」などへ対象が絞られました。
当時の行政解釈でも、Temporary Residentや単なるVisitorは、Ministerial Declaration等の特例がない限りMedicare対象外になると整理されています。
この改正によって、現在の「一時滞在者は原則として自分で医療費をカバーする」という制度の基本形が確立しました。
1989年 OSHC導入
海外留学生向けには1989年3月、Overseas Student Health Coverが導入されました。
制度の目的は、留学生自身が医療・病院費用を保険で負担し、豪州の病院・医師に未払い医療費が発生するリスクを抑え、留学生医療を豪州納税者へ転嫁しないことでした。
同時に、保険料が高すぎて留学希望者を遠ざけないよう、一定の最低給付を持つ標準的な留学生保険制度として設計されました。
1993年 全海外留学生へOSHC
制度移行は1989年に一度で完了したわけではありません。
1992年12月10日に政府は、1993年7月1日からすべての海外留学生をOSHCの対象とする方針を発表しました。1993年の連邦議会答弁でも、7月1日以降は「all overseas students」がMedicare arrangementsの外に置かれ、OSHCへ加入すると説明されています。
このため、「学生ビザ保持者がMedicareから外れた時期」を一つの日付で説明するなら、制度導入は1989年3月、全海外留学生への統一は1993年7月1日、と分けて考えるのが正確です。
2009年 457ビザ健康保険義務
旧Subclass 457 Business (Long Stay) Visaは、後にTemporary Work (Skilled) Visaと名称が変わった主要な就労ビザです。
457ビザ保有者は、一般的なTemporary ResidentとしてもともとMedicareの通常対象ではありませんでしたが、2009年9月14日の移民規則改正で、申請時に「豪州滞在中のAdequate Health Insurance」の証明が必要となり、ビザ条件8501として保険を維持する義務が明確化されました。
それ以前に付与された457ビザでは、Public Hospital Treatmentの一定コストについてSponsor側に責任が残る仕組みがありました。2009年改正後は、Visa Holder自身が適切なHealth Insuranceを維持する制度へ整理されました。
457ビザは2018年3月に廃止され、現在のTemporary Skill Shortage系の制度へ移行しましたが、一時就労ビザ保持者が適切な保険を持つという基本原則は継続しています。
| 時期 | 変更 | 意味 |
|---|---|---|
| 1988年12月 | Medicare Resident定義見直し | Temporary Residentを原則対象外へ。 |
| 1989年3月 | OSHC導入 | 留学生医療を自己負担型保険へ。 |
| 1993年7月 | 全海外留学生をOSHCへ | 学生のMedicare一般利用を終了。 |
| 2009年9月 | 457 Visaに8501 | 就労者自身のHealth Insurance維持義務。 |
| 2018年3月 | 457 Visa廃止 | Temporary Skill Shortage制度へ移行。 |
メディケアでカバーされる医療
メディケアに加入していても、「医療費がすべて無料」になるわけではありません。MBS、Bulk Billing、Public Patientなど豪州独自の仕組みを理解する必要があります。
GP・専門医
GPの診察は、Medicare Benefits Schedule(MBS)のSchedule Feeに対し通常100%、専門医など多くのOut-of-hospital Serviceは85%がMedicare Benefitの基準です。
医師がBulk Billingを選択すると、Medicare Benefitを医師が直接受け取り、患者はそのサービスについて自己負担なしとなります。
一方、医師はMBS Feeを超える料金を設定できるため、Bulk Billingでない場合は、実際の診療費とMedicare Rebateとの差額であるGapを患者が負担します。
公立病院
Medicare Eligible PersonがPublic HospitalでPublic Patientとして治療を受ける場合、入院・Emergency Departmentを含む対象治療費は基本的に自己負担なしです。
ただしPublic Patientでは、原則として自分で担当医を選べず、緊急性の低いElective Surgeryでは待機期間が生じることがあります。
Private PatientとしてPublic HospitalまたはPrivate Hospitalへ入院する場合、Medicareは医師のIn-hospital MBS Feeの75%を負担し、残りの医師費用やHospital Accommodation、Theatre FeeなどをPrivate Insuranceが補う仕組みです。
処方薬
処方薬はPharmaceutical Benefits Scheme(PBS)によって多くの医薬品が補助されます。
メディケアの対象外となるTemporary Residentでは、同じ薬でもPBS補助を受けられないケースがあり、保険の医薬品給付額を超えると自己負担が大きくなることがあります。
対象外の医療
メディケアは原則として、救急車、一般的な歯科、眼鏡・コンタクトレンズ、補聴器、一般的なPhysiotherapy、Chiropracticなどを幅広くカバーする制度ではありません。
Ambulanceは州・準州ごとに制度が異なり、Medicare Cardを持っていても請求が発生する地域があります。
この「公的制度の隙間」を埋めるのがPrivate Health InsuranceのExtrasやAmbulance Coverです。
| 医療 | Medicare | ポイント |
|---|---|---|
| GP | MBS基準100% | 実際の請求との差額あり得る。 |
| 専門医外来 | 通常MBS基準85% | Gapあり得る。 |
| Public Hospital | Public Patientは原則無料 | 医師・時期の選択制限。 |
| Private Hospital | 医師MBSの一部 | Hospital FeeはPrivate Coverが重要。 |
| 一般歯科 | 原則対象外 | Extras等。 |
| Ambulance | 対象外 | 州制度・保険で対応。 |
民間医療保険


豪州のPrivate Health Insuranceは、Medicareを置き換える制度ではなく、Medicareと併用する補完的な保険です。
Hospital Cover
Hospital Coverは、Private HospitalまたはPrivate Patientとして入院する場合のAccommodation、Theatre Fee、一定のMedical Gapなどを補います。
Hospital PolicyはGold、Silver、Bronze、Basicの4 Tierで整理され、それぞれ対象Clinical Categoryが異なります。
Private Hospitalを利用することで、医師・専門医を選択しやすい、Elective Surgeryの待ち時間を短縮しやすいといった利点があります。
General Treatment / Extras
Extras Coverは、Dental、Optical、Physiotherapy、Chiropractic、PodiatryなどMedicareが通常カバーしない医療サービスを対象とします。
ただし「加入していれば全額戻る」という制度ではなく、Annual Limit、Benefit Percentage、Waiting Period、Preferred Providerなどの条件があります。
Medicareと併用
Private Insuranceへ加入していても、GPなどOut-of-hospital MBS Serviceは通常Medicareが担当します。民間保険は、Medicareがカバーする外来診療費を自由に上乗せ補償できるわけではありません。
入院医療では、MedicareがPrivate PatientのMBS Feeの75%を支払い、民間保険が残り25%やGap、Hospital Chargeの一部を負担する形になります。
加入率
APRAによると、2026年6月末時点でHospital Treatment Cover加入者は12,823,752人、人口の45.8%でした。
General Treatment Coverは歯科・眼鏡など日常的に利用するサービスが多いため、Hospital Coverとは別に加入する家庭も多くあります。
| 種類 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| Hospital | Private Hospital入院 | Gold / Silver / Bronze / Basic。 |
| Extras | Dental、Optical、Physio等 | Annual Limitあり。 |
| Combined | Hospital + Extras | 一般的なパッケージ。 |
| Ambulance | 救急車 | 州制度を補完。 |
就労・ビジネス系一時滞在ビザとOVHC
日本から豪州へ赴任・就労する場合、最も重要なのは「勤務先が保険を用意しているから大丈夫」ではなく、本人のVisa Conditionを確認することです。
Condition 8501
Condition 8501は、Visa Holderに対して「豪州滞在中、Adequate Arrangements for Health Insuranceを維持すること」を要求するビザ条件です。
ビザ申請時だけ加入し、渡航後に解約することは条件違反になる可能性があります。
保険はPublic Hospital Treatment、MBS対象治療などについて、Home Affairsが示す最低水準を満たす必要があります。
OVHC
Overseas Visitors Health Coverは、Working Visa、Temporary Graduate、Visitorなど、Medicare対象外のTemporary Resident向け民間保険です。
保険会社によって商品内容は異なり、Hospital Onlyに近い低価格商品から、GP、Specialist、Prescription、Dental、Opticalなどを広く含む商品まであります。
OSHCのように全国一律の商品名・最低給付制度ではないため、自分のVisa Conditionを満たしているかを確認して契約する必要があります。
メディケア対象となる例外
一時就労ビザ保持者でも、RHCA対象国の条件を満たす人、Permanent Residencyを申請して一定条件を満たす人、Ministerial Orderの対象者などはMedicareへ加入できる場合があります。
この場合、Home Affairsの健康保険条件についてMedicare加入を根拠に免除・代替できるケースがありますが、Visa Grant LetterとHome Affairsの要件を個別に確認する必要があります。
日本国籍者には日豪RHCAがないため、就労ビザだけを理由にMedicareへ入ることは通常できません。
現在の就労ビザ
旧457 Visaは2018年3月に廃止され、Temporary Skill Shortage(Subclass 482)制度へ移行しました。その後も一時就労ビザ制度は改定されています。
PrivateHealth.gov.auでは、482や485などのWorking Visa Applicantについて、Visa Requirementを満たすOVHCを購入するよう案内しています。
会社がCorporate Health Planを提供している場合もありますが、Insurance Certificateに本人・家族が正しく含まれているか、Cover Start DateがVisa Requirementと一致しているかを確認する必要があります。
| ケース | 一般的な医療保険 | 注意点 |
|---|---|---|
| Temporary Work Visa | OVHC | 8501等を確認。 |
| Temporary Graduate 485 | 485対応OVHC | Student Visa終了時にOSHCも終了。 |
| PR申請中 | Medicare対象の場合 | 就労権等の要件。 |
| RHCA対象国 | Reciprocal Medicareの場合 | 国別範囲。 |
| 日本人一時就労 | 原則OVHC | 日豪RHCAなし。 |
学生ビザとOSHC


Student Visa Holderは、原則としてVisaの全期間についてOverseas Student Health Coverを維持する必要があります。
Education Providerが入学手続きと合わせてOSHCを手配することもありますが、学生本人が認可された保険会社の商品を選ぶことも可能です。
基本的な給付
Base OSHCは、GP、Specialist、Hospital Treatment、Diagnostic Imaging、Pathology、Emergency Ambulance、一部Prescription Medicineなどをカバーします。
最低給付では、Hospital Treatment中の対象Professional ServiceはMBS Feeの100%、外来GPはMBSの100% Benefit、専門医・検査などは通常MBS Feeの85%相当が基準です。
ただし医師がMBS Feeを超えて請求した場合、その差額は患者負担となることがあります。
歯科・眼鏡・理学療法
Basic OSHCは、一般的なDental、Optical、Physiotherapyなどを通常含みません。
必要な場合はExtras OSHCや別のGeneral Treatment Coverを追加します。
医薬品
OSHCにはPrescription Medicineへの限定的な給付がありますが、PBSを利用する一般のMedicare Eligible Residentと同じ仕組みではありません。
高額薬剤、特に一部のがん治療薬などでは大きなOut-of-pocket Costが生じる可能性があります。
家族
配偶者・子をStudent VisaのDependentとして帯同する場合、Single PolicyではなくCouple、Single Parent、Familyなど適切なOSHC契約が必要になります。
家族の一部だけ未加入になるとVisa Conditionを満たさない可能性があるため注意が必要です。
RHCA対象国の学生
英国、ベルギー、イタリア、オランダ、スロベニア、スウェーデン、ニュージーランドなど一部RHCA対象国の学生はMedicareも利用できる場合があります。
それでも原則としてOSHC加入義務自体は残ります。Medicare利用資格とOSHC Visa Requirementは別の制度だからです。
| OSHC | 基本プラン | 注意点 |
|---|---|---|
| GP | 対象 | MBS超過分はGap。 |
| Specialist | 対象 | 通常MBS基準85%相当。 |
| Hospital | 対象 | 契約病院等を確認。 |
| Emergency Ambulance | 対象 | 基本給付に含む。 |
| Prescription | 限定給付 | 高額薬は負担大。 |
| Dental / Optical | 通常対象外 | Extras追加。 |
民間保険を促す税制・制度
豪州ではPrivate Health Insuranceは原則任意ですが、政府は税制・保険料制度を通じて加入を促しています。
Medicare Levy
多くの豪州納税者は所得税とは別にMedicare Levyを支払い、一般的な税率は課税所得の2%です。
これはPrivate Health Insuranceに加入していても基本的にはなくなりません。
Medicare Levy Surcharge
一定以上の所得があり、適格なPrivate Hospital Coverを持たない人にはMedicare Levy Surcharge(MLS)が課されます。
2026~27年度の所得基準は、Singleで105,000豪ドル超、Familyで210,000豪ドル超からSurcharge対象となり、所得Tierに応じて1.0%、1.25%、1.5%です。
目的は高所得者にPrivate Hospital Cover加入を促し、Public Hospital Systemへの需要を抑えることです。
Private Health Insurance Rebate
一定所得以下の加入者には、Private Health Insurance Premiumの一部を政府が補助するRebateがあります。
2026年7月1日~2027年3月31日の65歳未満Base Tierでは24.118%で、所得が高くなるほど16.079%、8.038%、0%へ減少します。
OVHCなど一時滞在者向け保険には、一般のPrivate Health Insurance Rebateは通常適用されません。
Lifetime Health Cover
Lifetime Health Cover(LHC)は、Hospital Coverへの早期加入を促す制度で、2000年7月1日に始まりました。
原則として31歳を超えてから初めてHospital Coverへ加入すると、30歳を超える1年ごとに2%ずつPremium Loadingが上乗せされ、最大70%となります。
新規移民で31歳以上の場合は、FullまたはInterim Medicare Registrationから12か月以内にHospital Coverへ加入すればLoadingを回避できる特例があります。
OSHCやOVHCはLHCの「Complying Hospital Cover」としては扱われません。
| 制度 | 内容 | 2026~27年の目安 |
|---|---|---|
| Medicare Levy | 公的医療財源 | 一般に2%。 |
| MLS | 高所得・Hospital Coverなし | 1~1.5%。 |
| Rebate | Private Premium補助 | 所得・年齢で変動。 |
| LHC | 遅いHospital加入へのLoading | 年2%、最大70%。 |
日本の健康保険制度との比較
日本とオーストラリアはどちらもUniversal Health Coverageを持つ国ですが、外国人居住者の扱いとPrivate Insuranceの位置付けが大きく異なります。
日本は「居住者ベース」に近い
日本では、健康保険・国民健康保険の加入条件を満たす外国人も日本人と同様に公的医療保険へ加入します。
厚生労働省は、3か月を超えて日本に居住するなど一定要件を満たす外国人も公的医療保険の対象になると説明しています。
適用事業所で働く外国人従業員は、国籍に関係なく健康保険の被保険者となるのが原則です。
豪州は「在留資格ベース」の色が強い
豪州では、数年間フルタイムで働き納税していても、Temporary Work VisaだけではMedicare Eligible Personにならないことがあります。
この場合、勤務先または本人がOVHCを用意します。学生ならOSHCです。
つまり「居住して働けば公的健康保険へ入る」という日本の感覚を、そのまま豪州へ当てはめることはできません。
患者負担の考え方
日本の公的医療保険では、一般的な現役世代は保険診療費の30%を窓口負担する仕組みです。
さらにHigh-cost Medical Expense Benefitによって、1か月の自己負担が所得・年齢別の上限を超えた場合は超過分が支給されます。
豪州Medicareには日本の一律「3割負担」という考え方はありません。GPならMBS Benefit 100%、専門医外来なら85%といったSchedule基準があり、医師の実際のChargeとの差額がGapになります。
Private Insuranceの役割
日本の民間医療保険は、入院給付金や手術給付金など現金給付型が多く、公的健康保険に追加する任意保障という位置付けです。
豪州ではPrivate Hospital CoverそのものがPublic Systemと並ぶ医療提供ルートの一部になっており、Private Hospital、医師選択、待機時間、Hospital Feeをカバーする役割が大きい点が特徴です。
| 比較 | オーストラリア | 日本 |
|---|---|---|
| 公的制度 | Medicare | 健康保険・国民健康保険等。 |
| 外国人Temporary Resident | 原則Medicare対象外が多い | 一定居住要件で原則加入。 |
| Student | OSHC | 要件を満たせば公的保険。 |
| Temporary Worker | OVHC等 | 適用事業所なら健康保険。 |
| 一般患者負担 | MBS Rebateとの差額方式 | 現役世代は一般に3割。 |
| 高額医療 | Medicare Safety Net等 | 高額療養費制度。 |
| Private Insurance | Private Hospital利用に重要 | 公的保険への追加保障。 |
日本人が理解しておきたい制度上の注意点
日本人が豪州へ長期滞在する場合、最も多い誤解は「会社員だから国の健康保険に入る」「学生だから大学の保険で自動的に全部カバーされる」というものです。
まずVisa Grant Letterを確認
Visa Condition 8501が付いている場合、保険維持は単なる任意の安全対策ではなくVisa Requirementです。
勤務先が保険料を負担していても、退職・転職・Sponsor変更・家族追加などでPolicyが失効する可能性があります。
Student Visa終了時
OSHCはStudent Visa Holder向け保険なので、Student Visaが終了すれば原則としてOSHC Eligibilityも終了します。
Subclass 485など別のTemporary Visaへ移る場合は、そのVisaに対応したHealth Insuranceへ切り替える必要があります。
永住権申請時
Temporary Visa HolderでもPermanent Residency Applicationを提出すると、一定条件でMedicareへ加入できる場合があります。
このタイミングで「Medicareに入れたからPrivate Insuranceを全部解約する」と判断する前に、Visa Condition、Hospital Cover、LHC、MLS、家族のEligibilityを個別に確認する必要があります。
Medicareがあっても救急車は別
日本では救急車利用が原則無料ですが、豪州ではAmbulance費用が州・準州ごとに異なります。
Medicare Cardだけでは救急車料金をカバーしないため、州制度またはPrivate InsuranceのAmbulance Coverを確認します。
Dentalは自己負担が大きい
一般DentalはMedicareの通常対象外で、OSHC Basicでも通常対象外です。
歯科治療費は高額になることがあるため、長期滞在者はExtras CoverやOSHC Extrasを検討する価値があります。
日本の海外旅行保険とは別物
日本のTravel Insuranceで医療費を広くカバーできる商品もありますが、Student VisaのOSHC RequirementやCondition 8501を満たすかは別問題です。
「医療費が補償される保険」と「Visa Requirementを満たすHealth Insurance」は同義ではありません。
Private InsuranceでもGapは残る
豪州では医師がMBS Feeを超える料金を設定できるため、Private Insuranceに加入していてもOut-of-pocket Costが発生する場合があります。
治療前にDoctor Fee、Hospital Excess、Gap Arrangement、Insurer Agreement Hospitalを確認することが重要です。
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| Visa Condition | 8501などHealth Insurance義務を確認。 |
| Medicare Eligibility | Visa名だけで判断しない。 |
| Family Cover | 配偶者・子もPolicyに含むか確認。 |
| Ambulance | Medicareでは通常対象外。 |
| Dental | Medicare・Basic OSHCでは通常対象外。 |
| Gap | 保険加入後も自己負担あり得る。 |
| Visa変更 | OSHC→OVHC→Resident Cover等を見直す。 |
オーストラリアのメディケア・民間医療保険・OSHCに関するよくある質問(FAQ)
原則として入れません。
日本はオーストラリアとのReciprocal Health Care Agreement対象国ではないため、Student VisaではOSHCを利用するのが基本です。
はい。
豪州に居住するPermanent Residentは原則としてMedicareへ登録できます。
あります。
一定のPermanent Visa申請者で、就労権または対象となる家族関係などの条件を満たす場合は加入できます。
制度は段階的に移行しました。
OSHCは1989年3月に導入され、1993年7月1日から全海外留学生がOSHCへ統一され、一般のMedicare arrangementsの外に置かれました。
2009年9月14日の制度改正で、457 Visa ApplicantにAdequate Health Insuranceの証明とCondition 8501が明確に導入されました。
Basic OSHCでは一般Dentalは通常カバーされません。
Dentalが必要ならExtras OSHCなどを追加します。
いいえ。
MedicareはAmbulanceを通常カバーしません。費用は州・準州制度やPrivate Insuranceで対応します。
はい。
むしろ豪州ではMedicareを基礎にPrivate Hospital CoverやExtrasを追加する形が一般的です。
外国人Temporary Residentの扱いが大きく違います。
日本では一定期間居住する外国人も公的保険へ原則加入しますが、豪州ではTemporary Visa Holderの多くがMedicare対象外でOSHC・OVHCを利用します。
いいえ。
Hospital Excess、医師のMBS超過料金、Excluded Service、Annual LimitなどによりOut-of-pocket Costが残る場合があります。
まとめ
オーストラリアの医療保険制度は、Medicareを中心にPrivate Health Insurance、OSHC、OVHCを組み合わせる構造です。市民・永住者は原則Medicareへ加入しますが、Student Visaや多くのTemporary Work Visa Holderは一般のMedicare対象外です。
現在のTemporary Resident原則除外の基礎となったのは1988年末のHealth Insurance Act改正です。留学生については1989年3月にOSHCが導入され、1993年7月1日から全海外留学生がOSHCへ統一されました。旧457 Business Visaでは2009年9月14日からCondition 8501によるHealth Insurance維持義務が明確化されました。
Medicare対象者はGP、専門医、検査、公立病院、PBSなどについて公的給付を受けますが、一般歯科、救急車、眼鏡、一般的なPhysiotherapyなどは通常対象外です。そのため約45.8%の豪州人口が2026年6月時点でPrivate Hospital Coverを保有しています。
日本人留学生はOSHC、日本人のTemporary Work Visa Holderは一般にOVHCが中心です。日本と豪州にはReciprocal Health Care Agreementがないため、日本国籍だけを理由にMedicareを利用することはできません。
日本では一定条件を満たす外国人居住者も公的健康保険へ加入するのに対し、豪州ではVisa Statusが公的医療保険資格を大きく左右します。豪州で長期滞在・就労・留学する場合は、Visa Grant Letter、Medicare Eligibility、Health Insurance Policyの3点を一体として確認することが重要です。
オーストラリアのメディケア・民間医療保険・OSHCに関する参考情報
- Services Australia:Enrolling in Medicare
- Services Australia:Permanent Residents and Medicare
- Services Australia:Health Care and Medicare
- Services Australia:Private Health Insurance and Medicare
- PrivateHealth.gov.au:Overview of Health System
- PrivateHealth.gov.au:Overseas Student Health Cover
- PrivateHealth.gov.au:Working Visa Applicants
- PrivateHealth.gov.au:Overseas Visitors and Students
- Department of Home Affairs:Adequate Health Insurance
- Department of Health:OSHC Resources
- Department of Health:OSHC Fact Sheet
- APRA:Private Health Insurance June 2026
- PrivateHealth.gov.au:Medicare Levy Surcharge
- PrivateHealth.gov.au:Private Health Insurance Rebate
- PrivateHealth.gov.au:Lifetime Health Cover
- Federal Register of Legislation:Health Insurance Act 1973
- Federal Register of Legislation:Migration Amendment Regulations 2009 (No. 9)
- Parliament of Australia:1993 Medicare / Overseas Students records
- 厚生労働省:Overview of Health Insurance Policy in Japan
- 日本年金機構:外国人従業員を雇用したときの手続き
- 厚生労働省:高額療養費制度
オーストラリアの旅行手配
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