オーストラリアの地震とは?発生原因・地域別リスク・歴史的被害・耐震対策まで徹底解説

オーストラリアは、日本やニュージーランドのような活発なプレート境界から離れているため、「地震がほとんどない国」という印象を持たれがちです。確かに巨大地震の発生頻度は日本より低いものの、地震が起こらないわけではありません。オーストラリア大陸の内部でも地殻には応力が蓄積しており、既存の断層が動くことで地震が発生します。

ジオサイエンス・オーストラリア(Geoscience Australia)によると、国内ではマグニチュード3以上の地震が平均して年間約100回観測されています。マグニチュード5以上はおよそ1~2年に1回、被害を生じ得るマグニチュード6以上の地震も平均すると約10年に1回発生します。

豪州の地震で特に重要なのは、発生地点を事前に絞り込みにくいことです。プレート境界型地震と違い、大陸内部の古い断層が突然動く「プレート内地震」が中心で、歴史上ほとんど地震が知られていなかった場所でも比較的大きな地震が起こる可能性があります。

1989年のニューカッスル(Newcastle)地震ではマグニチュード5.4の規模で13人が死亡し、約5万棟の建物が被害を受けました。1968年のメッカリング(Meckering)地震はマグニチュード6.5、1988年のテナント・クリーク(Tennant Creek)では豪州の観測史上最大となるマグニチュード6.6が記録されています。2021年にはビクトリア州高地でマグニチュード5.9、2025年8月にはクイーンズランド州南東部のキルキバン(Kilkivan)付近でマグニチュード5.6の地震が発生しました。

この記事では、オーストラリアで地震が起こる仕組み、主な歴史的地震、地域別の地震ハザード、近年の地震活動、建物・インフラへの被害、全国地震ハザード評価、監視・速報体制、建築基準、地震と津波の関係、さらに日本からの旅行者・在豪邦人が知っておきたい「Drop, Cover, Hold On」や緊急時の行動まで、旅行情報ではなくオーストラリアの地震リスクをまとめたレポートとして解説します。

オーストラリアの地震とは?

オーストラリアはプレート境界から遠いので、地震はほとんど起きないのではないですか?
日本ほど頻繁ではありませんが、M5以上は平均1~2年に1回、M6以上も約10年に1回発生します。大きな地震は豪州のどこでも起こる可能性があります。

オーストラリアの地震は、主に「プレート内地震(Intraplate Earthquake)」です。日本の地震の多くは太平洋プレートやフィリピン海プレートなどの境界で発生しますが、豪州の主要都市はプレート境界から数千km離れています。

それでも豪州プレートは年間約7cmの速度で北東へ移動し、北・東側で太平洋プレート、西北側でユーラシアプレートなどと相互作用しています。この動きによって大陸内部に圧縮応力がたまり、岩盤が耐えられなくなった場所で既存断層が突然動きます。

国内では毎日のように小さな地震が観測されていますが、多くは人口の少ない地域で発生するか、規模が小さいため人には感じられません。ジオサイエンス・オーストラリアの平均値では、マグニチュード3以上が年間約100回です。

一方、地震リスクは「地震の多さ」だけでは決まりません。地震の規模、震源の深さ、地盤条件、人口密度、建物の構造、古さなどを組み合わせて考える必要があります。ニューカッスル地震はマグニチュード5.4と世界的には巨大地震ではありませんでしたが、都市直下に近く、軟弱地盤と古い組積造建物が重なったことで大きな被害になりました。

項目豪州の目安ポイント
M3以上年間約100回多くは無被害・無感。
M5以上平均1~2年に1回都市近郊なら建物被害の可能性。
M6以上平均約10年に1回潜在的に大きな被害。
最大記録M6.61988年テナント・クリーク。
主なタイププレート内地震発生場所を特定しにくい。
予知不可能揺れの前に確実な予報はできない。

日本と比べると発生頻度が低いため、日常生活で地震を意識する機会も少なくなります。しかし、だからこそ家具固定や避難行動などの知識が十分でない家庭・職場もあり、「頻度の低さ」と「被害の小ささ」を同じ意味にしないことが重要です。

オーストラリアの主な地震被害

豪州で最も被害の大きかった地震は、最大規模のテナント・クリーク地震ですか?
いいえ。最大規模はテナント・クリークですが、人口が少なかったため被害は限定的でした。人的・都市被害ではニューカッスル地震が特に重要です。

1954年 アデレード地震

1954年3月1日、南オーストラリア州のアデレード(Adelaide)近郊でマグニチュード5.4の地震が発生しました。

ジオサイエンス・オーストラリアによると、3人が重傷を負い、約3,000棟の建物が被害を受けました。壁の亀裂、煙突の倒壊、窓ガラスの破損などが多く、保険請求は3万件を超えました。

アデレード周辺には古い断層地形があり、現在も豪州国内では比較的地震ハザードが意識される地域です。都市部の古いレンガ・石造建物が地震時の弱点になり得ることを示した代表例でもあります。

1968年 メッカリング地震

1968年10月14日、西オーストラリア州(Western Australia)の小さな町メッカリング(Meckering)付近でマグニチュード6.5の地震が発生しました。

この地震では建物や道路が大きく損傷し、地表には約20kmにわたる断層のずれが現れました。地震断層が農地、道路、鉄道などを横切り、プレート境界から遠い豪州でも地表を断ち切るような地震が起こることを明確に示しました。

メッカリングを含む西オーストラリア州ウィートベルト(Wheatbelt)のイルガーン(Yilgarn)地域は、世界的には中程度でも、豪州国内では比較的高い地震ハザードを持つ地域として現在も研究対象になっています。

1988年 テナント・クリーク地震

1988年1月22日、ノーザンテリトリー(Northern Territory)のテナント・クリーク周辺で大規模な地震が相次ぎました。

同日にマグニチュード6.2、6.3、6.6級の大きな地震が連続し、最大のマグニチュード6.6は、現在の整理では豪州本土・沿岸部を含む観測史上最大の地震とされています。

地震は人口の少ない地域で発生したため人的被害は限定的でしたが、地表断層が形成され、主要なガスパイプラインが損傷しました。最大規模の地震が都市から離れていたことが、被害を抑えた大きな理由です。

1989年 ニューカッスル地震

1989年12月28日午前10時27分、ニューサウスウェールズ州のニューカッスルをマグニチュード5.4の地震が襲いました。震源はニューカッスルCBDから南西約15km、深さ約11kmと推定されています。

13人が死亡、160人が入院し、約30万人が影響を受けました。約5万棟の建物が被害を受け、そのうち約3万5,000棟は住宅でした。300棟が解体され、約1,000人が一時的に住居を失いました。

2017年価格へ換算した損害額は40億豪ドル超と推計されています。被害はハンター川(Hunter River)周辺の軟弱な堆積地盤で特に大きく、場所によって改正メルカリ震度階(Modified Mercalli Intensity/MMI)のVIII相当が観測されました。

ニューカッスル地震は、豪州で「中規模の地震でも都市直下なら大災害になる」ことを示した転換点です。その後の地震ハザード評価、建築基準、緊急対応の見直しに大きな影響を与えました。

地震規模主な被害・特徴
アデレード1954M5.43人重傷、約3,000棟被害。
メッカリング1968M6.5建物・道路被害、約20kmの地表断層。
テナント・クリーク1988M6.6豪州最大記録、ガスパイプライン損傷。
ニューカッスル1989M5.413人死亡、約5万棟被害、40億豪ドル超。

マグニチュードが大きいほど被害が大きいとは限らない

人口密度、震源の深さ、地盤、建物構造によって被害は大きく変わります。M6.6のテナント・クリークより、M5.4のニューカッスルの方が人的・経済被害ははるかに大きくなりました。

豪州で地震が起こる仕組み

豪州は安定した大陸に見えますが、「安定している=地殻に力がかかっていない」という意味ではありません。遠く離れたプレート境界で生じる力が大陸内部へ伝わり、長い時間をかけて岩盤に応力が蓄積します。

プレート内地震

オーストラリアプレートは世界で最も速く移動する大陸性プレートの一つで、年間約7cmの速度で北東へ移動しています。

北・東側では太平洋プレート、西北側ではユーラシアプレートなどとの衝突・相互作用によって、大陸内部に主として圧縮応力が生じます。この応力が古い断層や弱い岩盤部分で急に解放されると地震になります。

プレート境界のような一本の明瞭な地震帯がないため、「この断層だけを見ていればよい」という予測が難しいのが豪州地震の特徴です。過去に地震活動が少なかった地域でも、比較的大きな地震が突然発生する可能性があります。

断層・地表地震断層

豪州には数多くの古い断層がありますが、その多くは現在ほとんど活動していません。一方、地形に比較的新しい変形跡を残すものは「ネオテクトニック・フィーチャー(Neotectonic Feature)」として調査されています。

ジオサイエンス・オーストラリアのデータベースには、地表を変形させる規模の過去の地震に関連する断層・褶曲などが数百件登録されています。

メッカリングやテナント・クリークでは実際に地表断層が形成されました。地表が直接ずれると、道路、鉄道、パイプラインなど細長く連続するインフラは大きな損傷を受けます。

マグニチュードと震度の違い

マグニチュードは地震そのものの大きさ・放出エネルギーを表す一つの値です。豪州では近年、一般向け情報では単に「magnitude 5.6」のように表記することが推奨され、日本でなじみのある「リヒター・スケール」という呼び方は一般的ではなくなっています。

一方、ある地点でどれだけ強く揺れたかは「Intensity」と呼ばれ、豪州では改正メルカリ震度階(MMI)が使われます。MMIはIからXIIまであり、人が感じた状況や建物被害などから揺れの強さを評価します。

同じ地震でも震源に近い場所、軟弱地盤、古い建物の多い場所では影響が大きくなります。ニューカッスルでは軟弱な河川堆積物の上で強い揺れが増幅されました。

余震と地震予知

大きな地震の後には余震が続くことがあります。余震は一般に本震より小さく、時間とともに回数も減りますが、何日、何週間、場合によっては何か月も続くことがあります。

2021年ビクトリア州高地の地震では、数週間から数か月にわたり余震が続く可能性があるとされました。2025年キルキバン地震でも小さな余震が確認されています。

現在の科学では、豪州を含め「いつ、どこで、どの規模の地震が起きるか」を正確に予知することはできません。州の防災機関も、地震は予告なしに発生するため、地震情報が届く前にまず自分で身を守る必要があるとしています。

用語意味ポイント
震源地下で破壊が始まった地点深さが揺れ方へ影響。
震央震源の真上の地表地点被害最大地点とは限らない。
マグニチュード地震そのものの規模1増えるとエネルギーは約30倍。
MMI地点ごとの揺れ・被害I~XIIで表現。
余震本震後に起こる地震数週間~数か月続く場合。

地域別の地震ハザード

豪州の中で、地震が起こりやすい地域は決まっていますか?
相対的にハザードが高い地域はありますが、大地震は国内のどこでも起こり得ます。地図上で低ハザードだから「地震がない」という意味ではありません。

西オーストラリア州

西オーストラリア州内陸部は、豪州国内で地震活動が比較的目立つ地域です。特にパース(Perth)東方のウィートベルト、イルガーン地域には、メッカリング、カドゥー(Cadoux)、カリンギリ(Calingiri)など歴史的な地表断層地震があります。

2018年にはレイク・ミュア(Lake Muir)付近でマグニチュード5.2と5.3の地震が発生し、2021年にはワギン(Wagin)周辺でマグニチュード4.8の地震が発生しました。

西海岸沖でも大きな地震が起こります。2019年7月にはブルーム(Broome)沖でマグニチュード6.6の地震が発生し、キンバリー沿岸で強く感じられました。

南オーストラリア州

アデレードとその周辺も、歴史的地震と古い断層地形から、豪州の主要都市の中では地震ハザードが比較的意識される地域です。

1954年のM5.4地震では約3,000棟の建物が損傷しました。アデレードから150km以内では近年もM3級の地震が複数記録されており、2022年3月にはマウント・バーカー(Mount Barker)付近のM3.7で1万2,000件を超える体感報告が寄せられました。

南東部高地・ビクトリア州

オーストラリア南東部高地からビクトリア州東部にかけても、全国的に見れば比較的地震活動が活発です。

2021年9月22日、ウッズ・ポイント(Woods Point)近くでマグニチュード5.9の地震が発生し、メルボルンの建物にも被害が出ました。揺れはシドニー、ホバート(Hobart)、アデレードまで広範囲で感じられ、体感報告は4万件を超えました。

2024年に更新された全国地震ハザード評価では、ビクトリア州高地からラトローブ・バレー(Latrobe Valley)にかけて、従来より地震ハザード評価がやや高くなりました。

ダーウィン・北部

ダーウィン(Darwin)自体の近くで大地震が頻発するわけではありませんが、インドネシア東部のバンダ海(Banda Sea)などプレート境界で起こる大地震の揺れが北部豪州まで効率よく伝わります。

2023年版全国地震ハザード評価では、この遠地地震の影響をより正確に取り込んだ結果、ダーウィンの強い地震動ハザードが従来より高く評価されました。

この例は「震源が豪州国内にないから関係ない」とは限らないことを示します。特に高層建物は遠方の長周期地震動を感じやすい場合があります。

地域代表的な地震・要因特徴
WAウィートベルト1968メッカリングなど地表断層地震の歴史。
アデレード周辺1954 M5.4古い組積造建物に注意。
ビクトリア州高地2021 M5.9近年の活動でハザード評価上昇。
ハンター・バレー1989ニューカッスル都市直下型リスク。
ダーウィンバンダ海の遠地地震遠方から強い揺れが伝わる。

近年の地震と2026年時点の最新ハザード評価

豪州では大地震の間隔が長いため、「最近起きていないから安全」と感じやすい一方、2018年以降も各地でM5前後からM6級の地震が繰り返されています。

2018年 レイク・ミュア地震

西オーストラリア州南西部のレイク・ミュア周辺では、2018年にマグニチュード5.2と5.3の地震が発生しました。人口密度が低かったため大規模な都市被害には至りませんでしたが、地域の地震活動を理解する重要なデータとなりました。

2019年 ブルーム沖地震

2019年7月14日、ブルーム沖でマグニチュード6.6の地震が発生しました。これは豪州で観測された地震として最大級の規模です。

沿岸部では強い揺れが感じられ、一部住民は津波を警戒して自主的に高い場所へ移動しました。結果的に大きな津波は発生しませんでしたが、海底地震と津波リスクを考える重要な事例となりました。

2021年 ウッズ・ポイント地震

2021年9月22日、ビクトリア州高地のウッズ・ポイント付近でマグニチュード5.9の地震が発生しました。ビクトリア州の観測史上最大級の地震で、メルボルンCBDでは古い建物の外壁や装飾部分が落下するなどの被害が出ました。

揺れは複数州へ広がり、豪州の地殻では地震波が遠くまで比較的効率よく伝わることを改めて示しました。

2024~25年 ハンター・バレー

2024年8月にはニューサウスウェールズ州アッパー・ハンター(Upper Hunter)のデンマン(Denman)付近でM4.7、2025年4月にはシングルトン(Singleton)付近でM4.6の地震が発生しました。

2025年シングルトン地震では最初の6時間で4,000件を超える体感報告が寄せられ、シドニーからポート・マッコーリー(Port Macquarie)まで広く感じられました。ハンター地域では過去20年にM3以上が35回以上記録されています。

2025年 キルキバン地震

2025年8月16日、クイーンズランド州南東部のキルキバン付近、ジンピー(Gympie)から西約40kmでマグニチュード5.6の地震が発生しました。

クイーンズランド州の陸上地震としては50年以上で最大となり、揺れは南のウロンゴン(Wollongong)から北のケアンズ(Cairns)まで感じられました。体感報告は2万4,000件を超えています。

規模は1989年ニューカッスル地震に近かったものの、人口密度が低く、町からやや離れていたこと、建築基準が改善していることなどから大規模被害には至りませんでした。

2023年版National Seismic Hazard Assessment

ジオサイエンス・オーストラリアは2024年12月、2018年以来となる全国地震ハザード評価の大幅更新を公表しました。2026年時点で公表されている最新の全国評価はNSHA23です。

全国の大部分は世界的に見ればLow~Moderateのハザードですが、ダーウィン、ビクトリア州高地からラトローブ・バレー、西オーストラリア州の一部など、相対的に強い地震動が想定される地域が整理されています。

地震規模主な特徴
レイク・ミュア2018M5.2 / 5.3WA南西部の群発活動。
ブルーム沖2019M6.6沿岸で強く感じ、津波警戒。
ウッズ・ポイント2021M5.9メルボルンで建物被害。
シングルトン2025M4.64,000件超の体感報告。
キルキバン2025M5.6QLD陸上で50年以上ぶりの規模。

地震被害の仕組みと社会・経済への影響

地震被害は、揺れの強さだけではなく、建物の構造、地盤、人口密度、インフラの配置によって大きく変わります。豪州では特に古い無補強組積造建物が長年の課題になっています。

建物・落下物

ニューカッスル、アデレード、カルグーリー(Kalgoorlie)、メルボルンなどの地震では、レンガや石を鉄筋で十分補強していない無補強組積造(Unreinforced Masonry/URM)の建物に被害が集中しました。

こうした建物は横揺れに弱く、外壁、煙突、パラペット、装飾物が道路側へ崩落する危険があります。建物全体が倒壊しなくても、外壁の落下だけで人命被害が発生します。

家具、照明、棚、ガラスなどの非構造部材も重要です。地震が比較的少ない豪州では、家具固定が一般家庭に十分普及していない場合もあり、小さな地震でも転倒・落下物によるけがにつながります。

地盤・液状化・斜面

地震波は地盤の種類によって増幅されます。柔らかい沖積層や埋立地では、硬い岩盤より揺れが大きくなることがあります。ニューカッスルではハンター川周辺の軟弱堆積物上で被害が特に大きくなりました。

地下水位が高い砂質地盤では液状化が発生する可能性があります。地盤が一時的に強度を失うと、建物の沈下、道路・岸壁の変形、地下管路の浮上などが起こります。

山間部では強い揺れによる落石・地滑りも問題です。2021年ウッズ・ポイント地震は急峻な南東部高地で発生したため、ジオサイエンス・オーストラリアも斜面災害の可能性を調査しました。

道路・電力・ガス・通信

道路・橋梁は地盤変形、落石、橋脚・継ぎ目の損傷で通行不能になる場合があります。地表断層が直接横切ると、メッカリングのように道路・鉄道がずれることもあります。

ガス管、水道管、下水管などの地下インフラは、地盤変形や継ぎ手の破損に弱く、漏水・ガス漏れ・火災へつながります。テナント・クリーク地震では主要ガスパイプラインが損傷しました。

電力・通信も、変電設備、電柱、基地局、建物内設備の損傷によって停止する可能性があります。大都市直下では、直接損害以上に交通・通信の停止が経済活動へ影響します。

保険・地域経済

地震は頻度が低い一方、一度都市部で発生すれば損害が集中します。ニューカッスル地震の損害は2017年価格換算で40億豪ドル超とされ、豪州の自然災害史でも高額な事例です。

保険会社は全国地震ハザード評価を利用し、住宅・商業施設のリスクや再保険コストを分析します。建物の築年、構造、地盤条件、地域のハザードが保険損害の大きさを左右します。

歴史的建物の多い都市では、文化財損失も問題です。古いレンガ建築が多いメルボルンCBDでは、ジオサイエンス・オーストラリアの研究で、地震時の落下物・建物被害が地域復旧と文化遺産の両面に大きく影響し得るとされています。

被害主な原因代表的な影響
建物横揺れ、URMの脆弱性壁・煙突・装飾落下。
地盤軟弱地盤・液状化沈下、傾斜、管路損傷。
斜面急斜面の強震落石・地滑り。
道路・鉄道断層、地盤変形寸断、物流停止。
ライフライン配管・設備破損停電、断水、ガス漏れ。
経済都市部への集中被害保険、営業停止、復旧費。

地震観測・速報と全国地震ハザード評価

日本の緊急地震速報のように、揺れる前にスマートフォンへ警報が来ますか?
豪州では、地震の発生前に一般市民へ揺れを知らせる全国的な早期警報を前提にしていません。揺れを感じたら通知を待たず、その場でDrop, Cover, Hold Onを行います。

Australian National Seismograph Network

ジオサイエンス・オーストラリアは、豪州本土・離島・周辺海域などに100局を超える地震観測点を持つオーストラリア全国地震計ネットワーク(Australian National Seismograph Network)を運用しています。

国内だけでなく、ニュージーランド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、中国など各国の観測データや国際地震観測網も利用し、地震をリアルタイムで監視しています。

National Earthquake Alerts Centre

全国地震警報センター(National Earthquake Alerts Centre/NEAC)は、豪州で唯一24時間365日稼働する地震監視・速報サービスです。

国内の重要地震や津波発生の可能性がある地震は、発生後おおむね10分以内に初期解析されます。その他のM3.5以上の地震も通常20分程度で位置、規模、深さなどが解析されます。

これは地震発生後の迅速な把握・緊急対応のための仕組みです。地震の発生時刻を事前に予知するシステムではありません。

National Seismic Hazard Assessment

全国地震ハザード評価(National Seismic Hazard Assessment/NSHA)は、将来一定期間に強い地震動が発生する可能性を地域ごとに評価する全国モデルです。

2023年版は15の独立した地震源モデル、更新された地震カタログ、断層データ、国際的な類似地域の研究などを組み合わせています。建築基準、重要インフラ、保険、防災計画などに利用されます。

2026年時点で公開されているNSHA23は、豪州のほとんどの地域を世界的にはLow~Moderateのハザードとしながらも、ダーウィンやビクトリア州高地など一部地域の評価を更新しています。

Felt Report

地震を感じた人は、Earthquakes@GAの「Felt Report」へ体感状況を報告できます。これは単なるアンケートではなく、揺れがどの範囲へ伝わったか、地盤・建物条件でどの程度違ったかを解析する重要な市民科学データです。

2021年ウッズ・ポイント地震では4万件超、2025年キルキバン地震では2万4,000件超の報告が集まり、地震動モデルの改善に利用されました。

仕組み役割注意点
地震計ネットワークリアルタイム観測100局超+海外データ。
NEAC地震解析・政府等への通知24時間365日。
Earthquakes@GA最近の地震情報体感報告も可能。
NSHA23長期的な地震動ハザード評価建築・保険・防災に利用。
Felt Report市民から体感データ収集地震動モデル改善。

建築基準・耐震化と古い建物の課題

豪州の地震対策では「地震そのものを防ぐ」ことはできないため、建物が倒壊・崩落しないようにすることが重要です。日本ほど地震頻度が高くないからこそ、古い建物の耐震性が大きな課題になっています。

1990年代以前の建物

ジオサイエンス・オーストラリアによると、豪州では1990年代半ばまで、多くの建物設計で地震荷重が十分重視されていませんでした。

そのため、アデレード、メルボルン、パース、地方都市などには、現在の地震設計思想が十分反映される前に建てられた建物が大量に残っています。

無補強組積造が最大の弱点

特に問題となるのが無補強組積造です。レンガや石の壁に十分な鉄筋・補強がなく、床・屋根と壁の結合が弱い建物は、横方向の揺れで壁が面外へ倒れやすくなります。

ニューカッスル地震やカルグーリー地震では古いレンガ建物が大きな被害を受けました。2021年のメルボルンでも、古い建物の外壁・装飾部分の崩落が注目されました。

NCCとAS 1170.4

現在のナショナル・コンストラクション・コード(National Construction Code/NCC)は、建物の重要度や用途に応じて地震荷重を考慮する仕組みを持ち、地震作用の評価にはオーストラリア規格AS 1170.4が使われます。

地震ハザードマップの更新は、将来の建築基準や設計値を検討する基礎資料になります。NSHA23も、オーストラリア規格委員会が地震設計基準を見直す際の科学的根拠となります。

耐震改修

無補強組積造の耐震改修では、壁と床・屋根を確実につなぐ、パラペットや煙突を補強する、壁が外側へ倒れないよう固定するなどの方法があります。

ジオサイエンス・オーストラリアは西オーストラリア州政府などと、古い無補強組積造建物向けの耐震改修ガイドを整備しています。2026年時点でも、地方都市や歴史的建物のリスク低減に活用されています。

メルボルンCBDの課題

ジオサイエンス・オーストラリアのケーススタディでは、メルボルンCBDの建物のほぼ半数が無補強組積造とされ、強い地震動が発生した場合には落下レンガが人的被害を拡大する可能性が指摘されています。

耐震化は建物の全壊防止だけでなく、歩道上への外壁・装飾落下を防ぐこと、災害後に都市機能を早く回復させること、歴史的景観を保護することにも意味があります。

建物・設備主な弱点対策例
古いレンガ建物壁の面外崩壊壁・床・屋根の固定。
パラペット・煙突道路側へ落下アンカー・補強。
棚・家具転倒・落下壁固定、重い物は下段。
ガス・給水配管破損接続部・遮断方法確認。
重要施設機能停止高い重要度での耐震設計。

日本人旅行者・在豪邦人が知っておきたい対応

日本で地震経験が多い人でも、豪州では建物、家具固定、警報制度、津波情報の仕組みが異なります。特に「揺れの前に警報が来る」と考えず、自分で身を守る行動を取ることが重要です。

揺れたらDrop, Cover, Hold On

豪州の防災機関が推奨する基本行動は「Drop, Cover, Hold On」です。

まず床へ低くなり(Drop)、腕で頭と首を守りながら丈夫な机・テーブルの下へ入り(Cover)、揺れが止まるまで机などにつかまります(Hold On)。机がない場合は窓から離れた内壁のそばで頭と首を守ります。

室内では外へ飛び出さない

揺れている最中に建物の外へ走り出すと、外壁、ガラス、看板、レンガなどの落下物に当たる危険があります。原則として室内にいる場合は室内で身を守ります。

エレベーターは使用せず、揺れが収まった後に建物の損傷や避難指示を確認します。ガス臭がする場合は火気・スイッチ類を使わないでください。

屋外・車内

屋外にいる場合は、建物、外壁、電線、樹木などから離れた開けた場所へ移動します。特に古いレンガ建物の壁際は危険です。

車を運転中なら、安全に停車できる開けた場所で止まり、橋、トンネル、電線、建物の近くを避けます。揺れが止まっても道路損傷や落石に注意してください。

余震

本震後は余震が続く可能性があります。損傷した建物では小さな余震でも壁や天井が崩れる場合があるため、安全確認が取れるまで近づかないことが重要です。

落下した電線は通電しているものとして扱い、近づかないでください。ガス、水道、電気設備の損傷が疑われる場合は、緊急サービスや事業者の指示に従います。

家庭の備え

在豪邦人は、本棚、テレビ、冷蔵庫、背の高い家具を固定し、重い物・割れ物を低い棚へ移します。水、保存食、懐中電灯、モバイルバッテリー、ラジオ、常用薬、現金、重要書類のコピーなどをまとめておくと安心です。

地震後は停電・断水・通信障害が数日続く可能性があります。防災機関は、地震は突然発生するため平常時から緊急用キットと家族の連絡計画を準備するよう勧めています。

たびレジ・在留届・緊急電話

日本からの短期旅行者は外務省の「たびレジ」、3か月以上滞在する日本国籍者は在留届へ登録しておくことで、大使館・総領事館から災害・安全情報を受け取りやすくなります。

生命・身体・財産に差し迫った危険がある場合の緊急電話は000です。携帯電話からは112も利用できます。

状況基本行動
室内で揺れDrop, Cover, Hold On。外へ飛び出さない。
屋外建物・壁・電線・樹木から離れる。
車内安全な開けた場所へ停車。
揺れの後余震、ガス漏れ、落下物、損傷建物へ注意。
海岸で強い揺れ高台・内陸へ移動し津波情報を確認。
生命に危険000。
日本側の情報たびレジ・在留届。

津波・地震予知・今後のリスク

豪州の地震リスクを考える場合、国内の揺れだけでなく、周辺の活発なプレート境界で発生する巨大地震と津波も無視できません。

国内地震と津波

内陸で発生する豪州のプレート内地震は通常、津波を起こしません。しかし、海底で比較的大きな地震が起き、海底面を上下方向へ大きく変形させれば局地津波が発生する可能性があります。

2019年ブルーム沖M6.6地震では大きな津波は発生しませんでしたが、沿岸住民の一部が自主避難しました。強い海底地震では、公式警報を待つ前に自然の兆候を判断する必要がある場合があります。

周辺国の巨大地震

豪州北方・北西方にはインドネシア、パプアニューギニア、南太平洋など世界でも活動的なプレート境界があります。これらの地域の巨大地震は、豪州沿岸へ津波を送る可能性があります。

ダーウィンでは、バンダ海などの大地震の揺れそのものも強く感じられることがあります。国内地震と国外地震の両方を監視する必要があります。

Joint Australian Tsunami Warning Centre

豪州合同津波警報センター(Joint Australian Tsunami Warning Centre/JATWC)は、ジオサイエンス・オーストラリアとBOMが共同運用し、24時間体制で津波を監視しています。

約100の豪州地震観測点と約500の海外観測点からデータを受け取り、津波発生の可能性がある海底地震を解析します。津波の恐れがある場合はBOMが到達予想時刻、対象海岸、危険度を発表します。

海岸で長く強い揺れを感じた場合

西オーストラリア州DFESは、海岸付近で強い揺れが60秒以上続いた場合、公式警報を待たずに高い場所または内陸へ移動するよう案内しています。

津波は一度の波で終わらないことがあり、数時間にわたって複数回到達します。緊急機関が安全と発表するまで海岸へ戻らないことが重要です。

地震は増えているのか

近年、ビクトリア州やハンター地域、クイーンズランド州で比較的大きな地震が続いたため、「豪州の地震が増えているのでは」という疑問が出ることがあります。

しかし、プレート内地震の発生頻度変化を判断するには数百年規模の観測が必要です。ジオサイエンス・オーストラリアは、現在の短い観測期間だけから特定地域の地震活動が長期的に増加していると断定することはできないとしています。

予知よりハザード評価

地震の日時を正確に予知することはできません。そのため豪州の防災は、過去地震、断層、地質、地震動データを使って「将来どの程度の揺れが起こり得るか」を確率的に評価する方向へ進んでいます。

NSHA23の定期更新、古い建物の耐震改修、家具固定、緊急用キット、家族の行動計画など、発生前にできる対策が地震被害を減らす中心となります。

日本との違い

日本では地震発生頻度が高く、耐震設計、防災訓練、緊急地震速報が社会へ広く組み込まれています。豪州では大地震が低頻度のため、同じレベルで日常化しているわけではありません。

その一方、豪州には広い地域に古いレンガ建物があり、発生地点を絞りにくいプレート内地震という特徴があります。「日本より地震が少ない」という事実と、「備えが不要」という結論は分けて考える必要があります。

項目現状意味
地震予知日時・場所の正確な予知は不可事前準備が中心。
地震頻度長期的増加は断定できない短期の多発だけで判断しない。
津波監視JATWCが24時間運用周辺国の巨大地震も対象。
沿岸で強い揺れ自然兆候として行動高台・内陸へ。
将来対策NSHA・建築・耐震改修被害軽減を重視。

オーストラリアの地震に関するよくある質問(FAQ)

オーストラリアでも地震は起こりますか?

はい。

マグニチュード3以上は平均で年間約100回、M5以上は1~2年に1回、M6以上も約10年に1回発生します。

オーストラリア最大の地震は何ですか?

現在の整理では1988年のテナント・クリーク地震です。

最大の地震はマグニチュード6.6で、同じ日に複数の大きな地震が発生しました。

豪州で最も人的被害の大きい地震は何ですか?

1989年のニューカッスル地震です。

マグニチュード5.4で13人が死亡し、約5万棟の建物が被害を受けました。

なぜプレート境界から遠い豪州で地震が起こるのですか?

豪州プレートの移動による応力が大陸内部へ蓄積するためです。

岩盤が既存断層などで破壊されるとプレート内地震が発生します。

地震が多い州はどこですか?

西オーストラリア州内陸部、南オーストラリア州、南東部高地などは比較的地震活動が目立ちます。

ただし、大きな地震は国内のどこでも発生する可能性があります。

2025年のキルキバン地震はどれくらい大きかったですか?

マグニチュード5.6です。

クイーンズランド州の陸上地震としては50年以上で最大となり、2万4,000件を超える体感報告が集まりました。

豪州には日本のような緊急地震速報がありますか?

地震発生前の一般向け全国警報を前提とした仕組みではありません。

NEACが地震発生後に迅速な解析・通知を行います。揺れを感じたら通知を待たずに身を守ってください。

地震が起きたら何をすればよいですか?

Drop, Cover, Hold Onが基本です。

低い姿勢を取り、頭と首を守り、丈夫な机の下などで揺れが止まるまでつかまります。

豪州の地震で津波が起こることはありますか?

可能性はあります。

特に海底で大きな地震が発生した場合や、インドネシア・南太平洋の巨大地震では豪州沿岸へ津波が到達する可能性があります。

日本人旅行者・在豪邦人は何を準備すればよいですか?

Drop, Cover, Hold Onを覚え、家具固定、飲料水、保存食、常用薬、モバイルバッテリー、重要書類のコピーなどを準備してください。

短期旅行者は「たびレジ」、3か月以上滞在する日本国籍者は在留届も利用します。

まとめ

オーストラリアはプレート境界から離れているため、日本ほど地震は多くありません。しかし国内ではマグニチュード3以上が年間約100回、M5以上が1~2年に1回、M6以上も約10年に1回発生しており、「地震がない国」ではありません。

豪州の地震は大陸内部に蓄積した応力が古い断層で突然解放されるプレート内地震が中心です。そのため発生地点を絞り込みにくく、過去の地震活動が少ない地域でも大きな地震が起こる可能性があります。

歴史的には1954年アデレード、1968年メッカリング、1988年テナント・クリーク、1989年ニューカッスルなどが重要です。特にニューカッスル地震はM5.4ながら13人が死亡し、約5万棟が被害を受け、都市直下地震と古い建物の脆弱性を示しました。

近年も2019年ブルーム沖M6.6、2021年ウッズ・ポイントM5.9、2025年キルキバンM5.6などが発生しています。2023年版全国地震ハザード評価では、ダーウィンやビクトリア州高地など一部地域の強い揺れのハザード評価が見直されました。

地震を正確に予知することはできません。揺れを感じたら通知を待たずDrop, Cover, Hold Onを行い、揺れの後は余震、ガス漏れ、落下物、損傷した建物へ注意してください。海岸で長く強い揺れを感じた場合は、津波を想定して高い場所・内陸へ移動することも重要です。

オーストラリアの地震に関する参考情報

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