オーストラリアの家庭料理|定番メニューと現地の「おふくろの味」

オーストラリアを旅行していると、ステーキやフィッシュ&チップス、パブ飯などを目にする機会は多いですが、実際にオーストラリアの一般家庭ではどのような料理を食べているのでしょうか。

昔ながらの家庭では、肉料理にジャガイモや野菜を添えたシンプルな食事が中心でしたが、移民の多い現在のオーストラリアでは、パスタ、カレー、炒め物、麺料理などもすっかり日常の食卓に定着しています。

日本に「肉じゃが」「カレーライス」「味噌汁」のような、家庭や子供時代を思い出す料理があるように、オーストラリアにも「マムズ・クッキング(Mum's cooking)」と呼びたくなるような、懐かしい家庭の味があります。この記事では、昔ながらの定番から現在の家庭料理まで、オーストラリアの食卓を紹介します。

オーストラリアの家庭料理とは?

オーストラリア料理というとステーキやミートパイを思い浮かべますが、普通の家庭では何を食べているのですか?
昔ながらの家庭ならロースト料理や肉と野菜のシンプルな夕食が定番でした。今はパスタ、カレー、アジア料理なども日常的で、家庭によって食卓はかなり違います。

オーストラリアの家庭料理を一言で説明するのは、実は簡単ではありません。

イギリスからの移民によって築かれた食文化を土台としているため、ローストした肉、ジャガイモ、ニンジン、豆類、グレービーなどを組み合わせた料理は、現在でも昔ながらのオーストラリア家庭料理として残っています。

一方、第二次世界大戦後にはイタリア、ギリシャをはじめとするヨーロッパから多くの移民が入り、その後は中国、ベトナム、レバノン、インド、東南アジアなど世界各地の食文化が家庭にも広がりました。

そのため現在では、スパゲッティ・ボロネーゼ、ラザニア、炒め物、カレー、チャーハンなども「普通の家庭の夕食」として珍しくありません。

日本で「日本の家庭料理」と言っても家庭によって味付けや献立が違うのと同じで、オーストラリアでも家族のルーツ、世代、住んでいる地域によって、思い浮かべる家庭料理はかなり異なります。

昔ながらの家庭料理「ミート・アンド・スリー・ベジ」

昔のオーストラリアでは、毎日ステーキのような肉料理を食べていたのですか?
代表的なのが「ミート・アンド・スリー・ベジ」です。肉を一品、そこにジャガイモなど3種類ほどの野菜を添える、とてもシンプルな家庭料理です。

昔ながらのオーストラリアの家庭料理を象徴する言葉が、ミート・アンド・スリー・ベジ(Meat and three veg)です。

直訳すると「肉と3種類の野菜」。ラムチョップ、ビーフステーキ、ソーセージ、ローストチキンなどの肉料理に、ジャガイモ、ニンジン、グリーンピース、インゲン、カボチャ、ブロッコリーなどを組み合わせます。

野菜はゆでる、蒸す、ローストする程度で、味付けも塩、コショウ、グレービーなど比較的シンプル。豪華な料理というよりも、毎日の夕食としてお腹を満たす実用的な献立でした。

特に1950~1970年代ごろまでの家庭料理を振り返る話では、この「ミート・アンド・スリー・ベジ」がよく登場します。現在では毎晩このスタイルという家庭は少なくなりましたが、ロースト料理やパブ、クラブのメニューなどに、その名残を見ることができます。

肉料理 ラムチョップ、ステーキ、ソーセージ、ローストチキン、ローストビーフなど
野菜 ジャガイモ、ニンジン、グリーンピース、インゲン、カボチャ、ブロッコリーなど
味付け 塩、コショウ、グレービー、ミントソースなど
特徴 材料が分かりやすく、調理も比較的簡単。昔ながらの家庭の夕食を代表するスタイル

オーストラリアの「おふくろの味」とは?

日本の「おふくろの味」にぴったり対応する一つの料理が、オーストラリアにあるわけではありません。

英語ではホーム・クッキング(home cooking)コンフォート・フード(comfort food)、あるいは単純に「マムズ・クッキング」「マムズ・ロースト」のような言い方をします。

さらに祖母のレシピを意味する「ナナズ・レシピ(Nanna's recipe)」という表現もよく使われます。家族から受け継いだケーキやビスケット、ロースト、パイなどを、特別な思い出と一緒に語る点は日本とよく似ています。

アングロ系の家庭で育った人なら、次のような料理に懐かしさを感じる人が多いでしょう。

  • 日曜日のロースト・ディナー
  • リソールとマッシュポテト
  • カレード・ソーセージ
  • ツナ・モルネー
  • アプリコット・チキン
  • コーンド・シルバーサイドとホワイトソース
  • シェパーズ・パイ、コテージ・パイ
  • 家庭で焼いたアンザック・ビスケットやスライス

ただし、現在のオーストラリアでは家族のルーツによって「懐かしい味」は大きく違います。イタリア系家庭ならラザニアやパスタ、ギリシャ系ならムサカ、中国系なら炒め物や餃子、ベトナム系なら麺料理やスープが、まさにその家庭の「おふくろの味」になることもあります。

「オーストラリアのおふくろの味は一つではない」こと自体が、現在のオーストラリアらしさと言えるでしょう。

オーストラリアの定番家庭料理

ここからは、昔から家庭で親しまれてきた料理や、現在でも「家で食べる定番」として知られている料理を紹介します。

ロースト・ディナー

オーストラリアの家庭料理を語るうえで外せないのが、ロースト・ディナー(Roast dinner)です。

ラム、ビーフ、チキン、ポークなどをオーブンでじっくり焼き、ローストポテト、カボチャ、ニンジン、グリーンピースなどを添えます。肉汁から作るグレービーをかけるのも定番です。

イギリスのサンデー・ローストの流れをくむ料理で、以前は日曜日に家族が集まって食べる特別な夕食という意味合いが強くありました。現在でも週末や家族の集まり、クリスマスなどで登場します。

ラムの場合はミントソースやミントジェリーを添えることもあり、日本人にとっては少し意外な組み合わせかもしれません。

リソール

リソール(Rissoles)は、牛ひき肉などにパン粉、卵、タマネギ、ハーブ、調味料を加えて丸く成形し、フライパンやバーベキューで焼いた料理です。

見た目は日本のハンバーグによく似ていますが、一般的にはもう少し素朴で、しっかり焼き上げます。マッシュポテト、野菜、グレービーを添えれば、昔ながらの家庭の夕食そのものです。

材料が安く、作り置きもしやすいため、特に1980~1990年代の家庭料理として強い思い出を持つ人も多い料理です。

カレード・ソーセージ

カレード・ソーセージ(Curried sausages)は、焼いたソーセージをタマネギ、カレー粉、ストックなどを使ったとろみのあるソースで煮込む家庭料理です。

インド料理のカレーとはかなり違い、辛さは控えめ。家庭によってはリンゴ、ニンジン、グリーンピースなどを加え、ご飯やマッシュポテトと一緒に食べます。

20世紀前半からレシピが見られ、現在でも「昔ながらのオージー家庭料理」として紹介されることの多い一品です。日本のカレーライス同様、家によって材料や味がかなり違う料理でもあります。

シェパーズ・パイ/コテージ・パイ

ひき肉と野菜を煮込んだフィリングの上にマッシュポテトを広げ、オーブンで焼く料理です。

一般にラム肉を使うものをシェパーズ・パイ(Shepherd's pie)、牛肉を使うものをコテージ・パイ(Cottage pie)と呼びます。

イギリス由来の料理ですが、オーストラリアでも冬の家庭料理として長く親しまれてきました。大きな耐熱皿で家族分をまとめて作れるため、寒い日の夕食に向いています。

アプリコット・チキン

日本人には少し驚きの組み合わせかもしれませんが、アプリコット・チキン(Apricot chicken)はオーストラリアの懐かしい家庭料理として根強い人気があります。

代表的な昔ながらの作り方は、鶏肉に缶入りのアプリコット・ネクターとフレンチ・オニオン・スープ・ミックスを合わせてオーブンで煮込むという、とても簡単なものです。

甘酸っぱいソースと鶏肉の組み合わせで、ご飯や野菜と一緒に食べます。特に1970~1990年代の家庭料理を思い出させる「レトロな味」として語られることが多く、家庭ごとにアレンジがあります。

ツナ・モルネー

ツナ・モルネー(Tuna mornay)は、缶詰のツナ、ホワイトソース、チーズ、コーン、グリーンピース、パスタやライスなどを使うオーブン料理です。

耐熱皿に入れてチーズやパン粉をのせ、表面がこんがりするまで焼きます。材料費を抑えながら家族全員のお腹を満たせるため、長年家庭で作られてきました。

特に少し寒い日の夕食に似合う料理で、「子供のころによく食べた」と懐かしむ人の多いコンフォート・フードの一つです。

スパゲッティ・ボロネーゼ

イタリア料理がオーストラリアの家庭に定着した代表例が、スパゲッティ・ボロネーゼ(Spaghetti Bolognese)です。

家庭では「スパグ・ボル(spag bol)」などと略して呼ばれることもあり、牛ひき肉、タマネギ、トマトを中心にしたソースをスパゲッティにかけます。

本場イタリアのボロネーゼとは作り方も食べ方も異なりますが、簡単に大量に作れて子供にも人気があるため、現在ではオーストラリアの定番家庭料理と言ってよいほど身近な存在になっています。

ズッキーニ・スライス

ズッキーニ・スライス(Zucchini slice)は、すりおろしたズッキーニ、卵、チーズ、小麦粉、タマネギ、ベーコンなどを混ぜ、平たい型に入れてオーブンで焼く料理です。

焼きたてを夕食にしても、冷ましてランチボックスに入れてもよく、ピクニックにも便利。野菜を食べさせたい子供向けの料理としても定番です。

日本ではあまり見かけない料理ですが、オーストラリアの家庭料理を知るうえではぜひ覚えておきたい一品です。

コーンド・シルバーサイド

コーンド・シルバーサイド(Corned silverside)は、塩漬けにした牛肉をゆっくり煮込み、スライスして食べる昔ながらの料理です。

ホワイトソースやマスタードソースをかけ、ジャガイモやニンジン、インゲンなどを添えるのが定番。冷めた残りはサンドイッチやトースティーに使うこともできます。

今では毎週のように食卓に並ぶ料理ではありませんが、年配の世代を中心に子供時代を思い出す料理として知られています。

ソーセージ&マッシュ

オーストラリアのスーパーでは太めのビーフ、ポーク、ラムなどのソーセージが豊富に売られています。

家庭ではフライパンやバーベキューで焼き、マッシュポテト、グリーンピース、グレービーと一緒に食べるのが昔ながらの組み合わせ。調理が簡単で子供にも食べやすく、今でも平日の夕食に登場します。

朝食・軽食・ランチボックスの定番

家庭料理というと夕食に目が向きますが、オーストラリアらしさは朝食や子供のランチボックスにも現れます。

ベジマイト・トースト

ベジマイト(Vegemite)をバターを塗ったトーストに薄く伸ばした、非常にシンプルな朝食です。

ベジマイトは塩味がかなり強いので、初めて食べる場合は厚塗りしないのがコツ。チーズやアボカドと合わせる家庭もあります。

ウィートビックス

ウィートビックス(Weet-Bix)は、小麦を固めたビスケット状の朝食シリアルです。牛乳をかけ、バナナ、ベリー、はちみつなどを加えて食べます。

手軽で腹持ちがよく、子供から大人まで長く親しまれている家庭の朝食です。

トースティー/ジャッフル

パンにチーズ、ハム、ベイクドビーンズ、残ったコーンドビーフなどを挟み、ホットサンドメーカーで焼く軽食です。

一般にはトースティー(Toastie)と呼ばれますが、専用の型で端を閉じるタイプはジャッフル(Jaffle)と呼ばれることもあります。

ランチボックス

学校のランチではサンドイッチ、フルーツ、ヨーグルト、クラッカー、チーズ、ミューズリーバーなどが一般的です。前夜のズッキーニ・スライスやパスタを持っていく家庭もあります。

日本のお弁当のように何品も小分けにして詰めるより、比較的シンプルな内容になることが多いのも特徴です。

家庭で作るお菓子・デザート

オーストラリアでは、家族の集まりや学校行事、午後のお茶の時間に、家庭でケーキやビスケットを焼く文化もあります。

アンザック・ビスケット

アンザック・ビスケット(Anzac biscuits)は、オーツ麦、ゴールデンシロップ、バター、砂糖、小麦粉などで作るオーストラリアを代表するビスケットです。

家庭によって「カリカリ派」「少し柔らかい派」に分かれるほど、焼き加減にも好みがあります。アンザック・デーの時期だけでなく、家庭で作る定番のお菓子として親しまれています。

スライス

オーストラリアで「スライス(Slice)」と言う場合、四角い型で大きく焼いてから、小さな四角形や長方形に切り分けるお菓子を指すことがあります。

レモン・スライス、キャラメル・スライス、チョコレート・ココナッツ・スライスなど種類は豊富。家庭で作りやすく、持ち運びもしやすいため、学校や職場へ持参するお菓子としても定番です。

アップル・クランブル

アップル・クランブル(Apple crumble)は、煮たリンゴの上に小麦粉、バター、砂糖などで作ったそぼろ状の生地をのせて焼くデザートです。

温かいうちにアイスクリームやカスタードを添えると、冬の家庭的なデザートになります。

セルフ・ソーシング・プディング

セルフ・ソーシング・プディング(Self-saucing pudding)は、焼いている間にケーキ部分とソース部分が自然に分かれる温かいデザートです。

チョコレート味やレモン味などがあり、こちらもアイスクリームやクリームを添えて食べる、昔ながらの家庭向けデザートです。

多文化社会オーストラリアの現在の食卓

今でも毎日「肉と野菜」のような昔ながらの料理を食べているのでしょうか?
現在の家庭の食卓はもっと多国籍です。曜日によってパスタ、タイカレー、炒め物、タコス、ローストが並ぶ、といった家庭も珍しくありません。

現在のオーストラリアの家庭料理を理解するうえで欠かせないのが、多文化社会という背景です。

イタリア系移民によって広まったパスタやラザニアは、もはや「外国料理」という感覚が薄いほど一般家庭に浸透しました。中国料理をベースにした炒め物、タイ風カレー、インドカレー、メキシコ風タコスなども、家庭向けの簡単な料理として広く作られています。

スーパーにも、パスタソース、カレー・ペースト、ココナッツミルク、醤油、ナンプラー、トルティーヤ、フムスなど、さまざまな国の料理に使う食品が普通に並んでいます。

例えば平日の夕食が、月曜日はスパゲッティ・ボロネーゼ、火曜日は炒め物、水曜日はカレー、木曜日はタコス、金曜日はテイクアウェイ、日曜日はローストという家庭があっても不思議ではありません。

また、イタリア系、ギリシャ系、中国系、ベトナム系、インド系、レバノン系などの家庭では、それぞれの家族から受け継いだ料理が日常の食卓に並びます。

つまり現代のオーストラリア家庭料理は、英国系の伝統料理に、世界各国の移民文化が何世代にもわたって重なったものと考えると分かりやすいでしょう。

旅行中にオーストラリアの家庭料理を味わうには?

家庭料理は名前の通り家庭で食べるものなので、旅行中にレストランへ行けば必ず見つかるというものではありません。

それでも、次のような場所では家庭料理に近いメニューを見つけやすくなります。

パブ、クラブ ロースト、ソーセージ&マッシュ、シェパーズ・パイなど、家庭料理に近い素朴な料理が出ることがあります。
地方のカフェ ズッキーニ・スライス、ホームメイド・パイ、スライス、ケーキなどを見つけやすい場所です。
スーパー ローストチキン、マッシュポテト、サラダ、冷蔵・冷凍のパイやラザニアなど、家庭の夕食に近い食品を購入できます。
ホームステイ 一般家庭の夕食を実際に体験するという意味では、最も分かりやすい方法です。
キッチン付き宿泊施設 スーパーで材料を買い、リソール、ソーセージ&マッシュ、ズッキーニ・スライスなどを自分で作るのも面白い体験です。

シドニー(Sydney)、メルボルン(Melbourne)、ブリスベン(Brisbane)などの大都市では世界各国のレストランが充実しているため、むしろ昔ながらの家庭料理を専門に出す店を探す方が難しい場合もあります。

地方のパブやカフェ、RSLクラブなどでは、ローストやシンプルな肉料理など「家で食べていたような味」に出会えることがあります。

短期旅行でも、スーパーの食品売り場をのぞいてみると、現地の人が普段どのような食材や惣菜を買っているのかが分かり、レストラン巡りとは違ったオーストラリアの食文化を見ることができます。

オーストラリアの家庭料理に関するよくある質問(FAQ)

オーストラリアを代表する家庭料理は何ですか?

一つだけを挙げるのは難しいですが、昔ながらの家庭料理ではロースト・ディナー、ミート・アンド・スリー・ベジ、リソール、カレード・ソーセージ、シェパーズ・パイ、ツナ・モルネーなどが代表的です。

現在ではスパゲッティ・ボロネーゼ、カレー、炒め物など、移民文化から定着した料理も日常的な家庭料理になっています。

オーストラリアにも「おふくろの味」はありますか?

あります。ただし全国共通の一皿があるわけではありません。英語ではホーム・クッキング、コンフォート・フード、マムズ・クッキングなどの表現が近く、ロースト、リソール、カレード・ソーセージ、ツナ・モルネーなどを子供時代の味として懐かしむ人がいます。

移民家庭では、その家族のルーツを持つパスタ、カレー、麺料理、餃子などが「おふくろの味」になることもあります。

「ミート・アンド・スリー・ベジ」とは何ですか?

肉料理一品と3種類ほどの野菜を一皿に盛る、昔ながらの家庭料理のスタイルです。ラムチョップやソーセージなどに、ジャガイモ、ニンジン、グリーンピースなどを組み合わせます。

旅行者でもオーストラリアの家庭料理を食べられますか?

家庭料理そのものを専門にするレストランは多くありませんが、パブ、クラブ、地方のカフェなどでロースト、ソーセージ&マッシュ、パイ、ズッキーニ・スライスなどを見つけることがあります。

スーパーでローストチキンや惣菜を買ったり、キッチン付きの宿泊施設で現地の食材を使って作ったりするのも、家庭の食文化を知る良い方法です。

現在のオーストラリア家庭では毎日洋食を食べているのですか?

いいえ。現在のオーストラリアは非常に多文化で、家庭の食卓も多国籍です。パスタ、カレー、炒め物、タコス、アジア系の麺料理などが一般家庭でも普通に作られています。

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