オーストラリアの最低賃金・アワード・労働協約とは?給与・ペナルティレート・NESまで徹底解説

オーストラリアの賃金制度は、日本のように「国が決めた最低賃金だけを見ればよい」という仕組みではありません。多くの労働者には、全国最低賃金より細かく職種・技能レベル・勤務時間帯を定めた「モダン・アワード(Modern Award)」が適用され、企業や事業所によってはアワードに代わって「エンタープライズ・アグリーメント(Enterprise Agreement)」と呼ばれる労働協約が適用されます。

2026年7月1日から、全国最低賃金(National Minimum Wage)は時給26.44豪ドル、週38時間勤務で週1,004.90豪ドルとなりました。カジュアルで全国最低賃金が適用される場合は25%のカジュアル・ローディングを含め、最低時給33.05豪ドルです。ただし、この金額がすべての労働者にそのまま適用されるわけではありません。

実際には豪州の多くの従業員が120を超えるモダン・アワードのいずれかでカバーされます。アワードには職種ごとの最低賃金だけでなく、土日・祝日勤務のペナルティレート、残業、夜勤・早朝勤務、各種手当、休憩、最低勤務時間などが定められています。そのため同じ基本時給でも、勤務曜日や時間帯によって実際の支給額は大きく変わります。

一方、エンタープライズ・アグリーメントは、特定企業または複数企業と従業員の間で交渉して作る労働協約です。協約が適用される職場では原則としてモダン・アワードそのものは適用されませんが、協約の基本時給は該当アワードの基本時給を下回ることができません。さらに、新しい協約はフェア・ワーク委員会(Fair Work Commission/FWC)の承認を受け、原則として従業員がアワードより総合的に不利にならない「Better Off Overall Test(BOOT)」を通過する必要があります。

この記事では、オーストラリアの全国最低賃金、モダン・アワード、エンタープライズ・アグリーメント、National Employment Standards(NES)の関係、カジュアル・ローディング、ペナルティレート、残業、手当、個別雇用契約、Annual Wage Review、賃金未払い規制、西オーストラリア州の州制度まで、旅行情報ではなく豪州の賃金・労働条件制度を紹介するレポートとしてまとめます。

オーストラリアの賃金制度とは?

最低賃金が時給26.44豪ドルなら、誰でも最低26.44豪ドルという理解でよいですか?
26.44豪ドルは「全国最低賃金」です。実際には多くの従業員がアワードや労働協約で、これより高い最低時給やペナルティレートを受けます。

豪州の全国的な労使関係制度は、Fair Work Act 2009を中心に構成されています。最低賃金と労働条件を決める主要な仕組みは、National Employment Standards、モダン・アワード、登録済み労働協約、個別雇用契約です。

この中で最も基本となるのがNational Employment Standards(NES)です。NESは最大週労働時間、年次有給休暇、病気・介護休暇、育児休暇、祝日、解雇予告、退職金、スーパーアニュエーションなど、全国制度の従業員へ適用される最低労働条件です。

モダン・アワードは、業界または職種ごとに「その仕事なら最低でもこの賃金・条件」という基準を定めます。レストラン、ホテル、小売、建設、製造、鉱業、事務、介護、清掃、教育など、幅広い産業・職種が対象です。

エンタープライズ・アグリーメントは特定企業・職場向けの労働協約です。企業ごとの勤務シフト、手当、昇給、休日、残業計算などを独自に定められるため、大企業、公共交通、鉱山、病院、大学、空港、航空会社などで広く利用されています。

個別雇用契約は、会社と個人の間で給与や職務を定める契約ですが、NES、適用アワード、適用協約の最低基準を下回ることはできません。高い年俸を契約したからといって、自動的にすべてのアワード権利を失うわけでもありません。

制度役割主な対象
NES全国共通の最低労働条件全国制度の従業員。
National Minimum Wage最低時給の最終的な下限Award・Agreementなしの従業員。
Modern Award産業・職種別の最低賃金・条件大多数の一般労働者。
Enterprise Agreement企業・職場ごとの労働条件協約でカバーされる従業員。
Employment Contract個人の給与・職務・条件各従業員。

制度を正しく理解する第一歩は、「自分はいくらもらっているか」ではなく、「自分にどのアワードまたは協約が適用され、その中のどのClassificationに該当するか」を確認することです。

全国最低賃金

全国最低賃金はFair Work Actに基づく最低賃金で、アワードや登録済み労働協約にカバーされていない従業員へ適用されます。

成人最低賃金

2026年7月1日から全国最低賃金は、21歳以上のフルタイム・パートタイム従業員について時給26.44豪ドル、または週38時間で週1,004.90豪ドルです。

税引前のGross Payとしての金額で、雇用主と従業員が「これより安い賃金で合意した」場合でも、その合意は最低賃金を下回る根拠にはなりません。

最低賃金改定は7月1日から一律に日割りで変わるのではなく、原則として7月1日以降に始まる最初のFull Pay Periodから適用されます。

カジュアル最低賃金

全国最低賃金が適用されるカジュアル従業員には25%のCasual Loadingが加算されます。2026年7月1日以降は最低時給33.05豪ドルです。

カジュアル・ローディングは、フルタイム・パートタイム従業員が受ける有給年休、病気休暇、解雇予告、Redundancyなどの一部権利を持たないことへの補償的な性格があります。

ただし、アワードが適用されるカジュアルの残業・土日・祝日レートはアワードごとに計算方法が違います。「基本時給×1.25に、さらにすべてのペナルティ率を掛ける」と単純計算できるとは限りません。

ジュニア・見習い・研修生

21歳未満のAward・Agreement Free従業員には年齢別の割合賃金があります。2026年7月から、例えば18歳は時給18.06豪ドル、19歳は21.82豪ドル、20歳は25.84豪ドルです。

見習い(Apprentice)や研修生(Trainee)は別の賃金表が適用される場合があり、単純に成人最低賃金だけで判断できません。学年、年齢、学校卒業後の期間、資格レベルなどによって賃金が変わるアワードもあります。

Annual Wage Review

全国最低賃金とモダン・アワード最低賃金は、FWCが毎年Annual Wage Reviewで見直します。物価、生産性、雇用、低賃金労働者の生活水準、企業への影響などを踏まえて決定されます。

2026年7月1日から、全国最低賃金は時給26.44豪ドルとなり、モダン・アワードの最低賃金は原則4.75%引き上げられました。

さらに2026年の決定では、継続雇用に適用されるアワード最低レートが全国最低賃金を下回らないよう、最低でも週1,004.90豪ドル・時給26.44豪ドルとする下限が設けられました。最初の6か月以内に限るEntry-level rateについては週978.10豪ドル・時給25.74豪ドルが下限です。

2026年7月以降最低額対象
National Minimum Wage$26.44 / 時間Award・Agreement Free成人。
週給$1,004.9038時間勤務。
Casual Minimum$33.05 / 時間25% Loading込み。
Award最低賃金改定原則+4.75%各Modern Award。
短期Entry-level下限$25.74 / 時間最初の6か月以内等。

モダン・アワード

アワードは、会社が優秀な社員へ出す「賞」ではないのですか?
豪州の雇用制度でいうAwardは、産業・職種ごとの最低賃金と労働条件を定めた法的文書です。

誰に適用されるのか

豪州には120を超えるモダン・アワードがあり、多くの産業・職種をカバーしています。

どのアワードが適用されるかは会社名だけでは決まりません。AwardのCoverage Clause、事業内容、従業員の職務、Classificationを確認します。

同じ企業の中で複数のアワードが適用されることもあります。例えば建設会社で、現場の大工にはBuilding and Construction Award、オフィス事務員にはClerks Awardが適用されるといったケースです。

一方、管理職や高い専門性を持つ一部職種など、アワードにカバーされないAward-free従業員もいます。

職種・技能分類

アワードの最低賃金は一律ではなく、Classificationによって細かく分かれます。仕事内容、資格、技能、責任、経験などによってLevel 1、Level 2、Trade Levelなどに分類されます。

「最低賃金より高いから問題ない」とは限りません。例えば本来Level 4に該当する仕事をしている人をLevel 1として支払っていれば、全国最低賃金を超えていてもAward上のUnderpaymentになる可能性があります。

ペナルティレート・残業

多くのアワードでは、土曜、日曜、祝日、夜間、早朝、シフト勤務に対して通常時給より高いPenalty Rateを定めています。

また、所定のOrdinary Hoursを超えた勤務や、決められた時間帯外の勤務にはOvertime Rateが適用される場合があります。

ペナルティレートと残業の計算方法はAwardによって異なり、同じ日曜日勤務でも小売、レストラン、ホテル、製造、鉱業で率が違います。

各種手当

アワードには賃金以外にもAllowancesが定められています。工具、自家用車、制服、洗濯、食事、出張、First Aid、特殊作業、資格など、業界ごとに多数の手当があります。

金額が毎年改定される手当もあるため、古いAward Pay Guideを使い続けるとUnderpaymentにつながります。

Awardで決まる項目内容
Minimum Rate技能・職務別の基本給Level 1~Level 6等。
Penalty Rate不便な時間帯の割増土日・祝日・夜間。
Overtime所定外労働の割増150%、200%等。
Allowance費用・技能・特殊勤務への手当制服、食事、車両、工具。
Hours / Breaks通常勤務時間・休憩Spread of Hours等。
Minimum Engagement最低勤務・支払時間Casual 2~3時間等。

エンタープライズ・アグリーメント

日本語で「労働協約」と表現されることの多いEnterprise Agreementは、特定の企業・事業所または複数企業に適用される登録済み労働条件です。本記事では、このEnterprise Agreementを「労働協約」として扱います。

協約の種類

現在のFair Work制度では、大きくSingle-enterprise agreement、Multi-enterprise agreement、Greenfields agreementがあります。

Single-enterprise agreementは一つの雇用主、または関連する複数企業を対象とします。Multi-enterprise agreementは複数の独立した雇用主を対象とします。Greenfields agreementは、まだ従業員を雇っていない新規事業・プロジェクト向けです。

交渉・投票・承認

労働協約は、雇用主が一方的に社内規則として作るものではありません。雇用主、従業員、必要に応じて労働組合などのBargaining Representativeが交渉します。

協約案は従業員に提示され、法定手続きを経て投票が行われます。必要な賛成を得た後、FWCへ承認申請します。

FWCは、協約が法律上の要件を満たすか、従業員がGenuinely Agreedしているか、NESに反しないか、必要な場合にBOOTを通過するかなどを審査します。

Better Off Overall Test

BOOTは、労働協約と、本来その従業員に適用されるモダン・アワードを比較する制度です。

新しい労働協約では、一部の条件がAwardより低くても、それだけで直ちに不承認になるわけではありません。高い基本給、追加休暇、手当など有利な条件と、不利になる条件を総合的に比較し、各Award-covered employeeと将来雇用されるProspective Employeeが全体としてAwardよりBetter Offである必要があります。

例えば協約で日曜Penalty Rateを低くする代わりに基本時給を大幅に引き上げる設計はあり得ますが、実際に日曜勤務をする従業員まで含め、総合的に有利であることを示す必要があります。

アワード最低時給との関係

協約が成立すると、その従業員には原則としてAwardではなくAgreementの条件が直接適用されます。

しかし協約のBase Rate of Payは、その従業員を本来カバーするAwardのBase Rateを下回ることができません。Annual Wage ReviewでAward Rateが上がり、古いAgreement Rateを追い越した場合、少なくとも新しいAward Base Rateを支払う必要があります。

注意したいのは、Annual Wage Reviewの上昇率がAgreement Rateへ自動的にそのまま上乗せされるとは限らないことです。協約に「Annual Wage Reviewに連動して昇給する」と書かれていれば連動しますが、書かれていない場合はAgreement Rate自体は変わらず、Award Floorを下回った部分だけ補正されるケースがあります。

項目Modern AwardEnterprise Agreement
対象産業・職種全体特定企業・複数企業。
作成FWCが制定・変更職場で交渉。
賃金Classification別最低額独自賃金表。
ペナルティAward所定率独自設計可能。
承認既存法的文書FWC承認が必要。
最低の下限Award RateBase RateはAward未満不可。

NES・アワード・協約・雇用契約の優先関係

雇用契約書に「残業代は支給しない」と書いてあれば、それが優先されますか?
契約書だけで法律上の最低権利を消すことはできません。NESや適用Award・Agreementより不利な条件は原則として有効な最低基準にはなりません。

豪州の賃金制度で混乱しやすいのが、複数の文書が同時に存在することです。

例えば従業員が雇用契約書を持っていても、その人がModern Awardでカバーされていれば、Awardの最低賃金・Penalty Rate・Overtime・Allowanceなどが法的な最低基準として残ります。

Enterprise Agreementが適用される場合は、原則としてAwardの条項そのものは直接適用されません。ただしAgreementのBase RateはAward Base Rate未満にはできず、承認時にはBOOTが関係します。

そしてAwardでもAgreementでも、National Employment Standardsを排除したり、NESより低い最低条件を設定したりすることはできません。

National Employment Standards

2026年時点のNESには、Maximum Weekly Hours、Flexible Working Arrangements、Casual Employment、Parental Leave、Annual Leave、Personal/Carer's Leave、Compassionate Leave、Family and Domestic Violence Leave、Community Service Leave、Long Service Leave、Public Holidays、Superannuation、Notice and Redundancy、Information Statementsなどが含まれます。

フルタイム従業員の通常最大労働時間は週38時間を基礎とし、それにReasonable Additional Hoursが加わる仕組みです。

契約で高い給与を払う場合

雇用契約でAwardより高い時給・年俸を設定することは当然可能です。

ただし「高い年俸だからAwardのPenalty・Overtime・Allowanceをすべて含む」とする場合、契約内容、AwardのAnnualised Wage条項、Set-off条項、実際の勤務時間などを確認する必要があります。

特に長時間残業や週末勤務が増え、年俸をAward基準で再計算した結果、実際には不足していたというケースがあります。

文書・制度下回れないもの補足
NES法律上の基本最低条件Award・Agreementでも排除不可。
Modern AwardNES産業・職種別最低条件。
Enterprise AgreementNES、Award Base Rate承認時BOOT。
Employment ContractNES、適用Award / Agreement個別に上乗せ可能。

実際の給与計算例

豪州の最低賃金制度は、基本時給だけを見ても実際の支給額を判断できません。ここでは2026年7月以降の代表例で仕組みを確認します。

ホスピタリティ

Hospitality Industry (General) Awardでは、Level 1の成人フルタイム・パートタイム従業員の基本時給は26.44豪ドルです。

同じLevel 1でも、通常勤務の土曜は33.05豪ドル、日曜は39.66豪ドル、祝日は59.49豪ドルとなります。

Level 2は基本27.08豪ドル、Level 3は27.97豪ドル、Level 4は29.45豪ドルと、仕事内容・技能によって最低賃金自体が上がります。

小売

General Retail Industry Awardでは、フルタイム・パートタイムのPenalty Rateは一般に平日18時以降125%、土曜125%、日曜150%、祝日225%です。

カジュアルでは、通常のCasual Loadingを含めて平日18時以降150%、土曜150%、日曜175%、祝日250%とする賃金表が設けられています。

このように「日曜日だから一律1.5倍」というわけではなく、Employment TypeとAwardによって率が違います。

カジュアル

Award・Agreement Freeの成人カジュアルであれば、2026年7月以降は全国最低時給26.44豪ドル×125%=33.05豪ドルが下限です。

しかしAward-covered casualでは、まずそのClassificationのAward Base Rateを確認し、そのAwardが定めるCasual Loading、Penalty、Overtimeの計算方法を使います。

例えばAwardによってはCasual LoadingをPenalty Rateに含めた表記をし、別のAwardでは加算関係が異なります。計算はFair Work OmbudsmanのPay and Conditions Tool(PACT)で確認するのが実務的です。

労働協約適用者

Enterprise Agreement適用職場では、Agreementの賃金表やPenalty条項を確認します。

たとえばAgreement上の基本時給が34豪ドルでも、Annual Wage Review後に本来のAward Base Rateが36.23豪ドルへ上がれば、Agreementの基本時給は少なくとも36.23豪ドルとして扱われます。

一方、Agreementに書かれた手当、勤務時間、休暇など他の条項は引き続き適用されるため、「Awardが一部だけ復活する」というより、Base Rate FloorがAward水準へ引き上げられるイメージです。

2026年7月以降注意点
全国最低時給$26.44Award・Agreement Free。
全国最低Casual$33.0525% Loading込み。
Hospitality Level 1 土曜$33.05FT/PT。
Hospitality Level 1 日曜$39.66FT/PT。
Hospitality Level 1 祝日$59.49FT/PT。

雇用契約・Individual Flexibility Arrangement

会社と本人が合意すれば、Awardの一部を自由に変更できますか?
AwardにはIndividual Flexibility Arrangementの仕組みがありますが、対象条項・書面要件があり、従業員がBetter Off Overallでなければなりません。

Employment Contract

個別雇用契約では、基本給、年俸、職務、勤務地、試用期間、Bonus、秘密保持、退職時の手続きなどを定めます。

ただし契約書がAwardより低い時給を定めたり、NESの年休をゼロにしたりすることはできません。従業員が署名していても最低法定権利は残ります。

Individual Flexibility Arrangement

多くのModern AwardにはIndividual Flexibility Arrangement(IFA)の条項があります。雇用主と個々の従業員が、Awardの一部条件を本人に合わせて変更できる制度です。

代表的には勤務時間、Overtime、Penalty Rate、Allowance、Leave LoadingなどAwardで認められた項目を変更します。

IFAは従業員が強制されずにGenuinely Agreeする必要があり、書面で作成し、変更するAward条項と変更内容を明示します。

最も重要なのは、IFAによって従業員がAwardのままよりBetter Off Overallでなければならない点です。

例えば週末Penaltyを固定手当へ置き換える場合、実際の勤務パターンを考慮して、本人が金銭面・条件面で総合的に有利である必要があります。

年俸制との違い

IFAはAward条件を個別に調整する制度で、単なる「年俸契約」と同じではありません。

AwardにAnnualised Wage Arrangementの条項がある場合は、その条項に従って基本給、Penalty、Overtime等を年俸へ組み込める場合がありますが、記録・比較・定期精算などの要件が課されるAwardもあります。

企業側にとっては給与計算を簡素化できますが、実際の勤務実績が想定より増えればUnderpaymentが発生するため、年間だけでなくPay Periodごとの管理が重要になります。

賃金記録・ペイスリップ・未払い賃金

豪州では「正しい時給を設定する」だけでなく、勤務時間と支払記録を適切に保存し、従業員へPay Slipを発行することが法律上重要です。

Pay Slip

雇用主は給与支払日から1営業日以内に、紙または電子形式でPay Slipを従業員へ交付する必要があります。

Pay Slipには雇用主・従業員名、支払期間、Gross / Net Pay、時給、労働時間、Allowance、Deduction、Superannuation情報など、該当する法定項目を記載します。

Time and Wage Records

雇用主は従業員の賃金、勤務時間、休暇、Super、雇用終了などに関する記録を保存します。

特にCasual、Shift Worker、Overtime、Penalty Rateのある従業員では、実際の開始・終了時刻が不明だと正しいAward計算ができません。

Underpayment

未払い賃金は、単純に基本時給が低いケースだけではありません。

Classification違い、週末Penaltyの未払い、Overtimeの未払い、Allowanceの漏れ、最低勤務時間を満たさない支払い、Annualised Salaryの不足などもUnderpaymentになります。

2025年から意図的な未払いは刑事犯罪

2025年1月1日から、従業員の賃金・法定Entitlementを意図的に支払わない行為は、一定の場合に刑事犯罪となりました。

Fair Work Ombudsmanは意図的なUnderpaymentを調査し、適切な案件を刑事訴追へ回すことができます。有罪となれば罰金や拘禁刑の対象になる可能性があります。

一方、Honest Mistakeまで自動的に刑事事件になるわけではありません。制度の目的は、故意に賃金を盗むような行為をより厳しく取り締まることです。

労働者側の確認方法

従業員は、雇用契約だけでなく、適用Award、Classification、Pay Slip、勤務記録を突き合わせて確認する必要があります。

Fair Work OmbudsmanのPay and Conditions ToolではAward、Employment Type、Classification、勤務曜日・時間を選択して最低賃金を確認できます。

チェック項目確認する内容典型的な問題
Classification実際の仕事内容低いLevelで支給。
Ordinary Hours通常勤務時間Overtime未計算。
Weekend / PH土日祝勤務Penalty未払い。
Allowance車両・制服・食事等手当漏れ。
Pay Slip時給・時間・控除記録不足。
Annual SalaryAward換算との比較年俸でも不足。

全国制度と西オーストラリア州の州制度

オーストラリアの大部分の民間雇用はNational Fair Work Systemで運用されていますが、すべてが全国制度ではありません。

特に西オーストラリア州(Western Australia)では、民間部門にも州産業関係制度(State Industrial Relations System)とNational Fair Work Systemの2制度が併存しています。

西オーストラリア州のState System

2026年時点で、西オーストラリア州のSole Trader、法人化されていないPartnership、一定のUnincorporated Trustなどは、原則として州制度の対象となります。

地方自治体も州制度に入ります。州制度にはWA Award、Registered Industrial Agreement、Common-law Employment Contractなどがあり、Minimum Conditions of Employment Act 1993が最低条件を支えています。

National System

西オーストラリア州でも、Pty LtdなどのConstitutional Corporation、外国法人、一定のIncorporated AssociationなどはNational Systemに入ります。

その場合はFair Work Act、NES、Modern Award、Enterprise Agreementなど全国制度が基本になります。

なぜ重要なのか

同じパース(Perth)で同じような仕事をしていても、雇用主がPty LtdなのかSole Traderなのかで適用制度が違う場合があります。

そのため西オーストラリア州では、最低賃金を調べる前に「自分の雇用主がState SystemかNational Systemか」を確認する必要があります。

一方、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、タスマニア州などの民間企業では、National Fair Work Systemが中心です。

西オーストラリア州では「Fair Workだけ見ればよい」とは限らない

Sole Traderや法人化されていない事業体の従業員ではWA State Systemが適用される場合があります。雇用主のBusiness Structureを確認することが最初のステップです。

2026年時点の制度変更と今後

オーストラリアの労働制度は毎年、最低賃金だけでなくAward、Casual、Enterprise Bargaining、Superannuationなど複数分野が変更されます。2026年時点でも、雇用主・従業員ともに「一度確認した賃金表を数年間使う」運用は危険です。

2026年最低賃金改定

2026年7月からNational Minimum Wageは時給26.44豪ドル、週1,004.90豪ドルへ上昇しました。

最低Award Wageは原則4.75%上昇し、各Award Pay GuideとPACTも更新されています。

一部Awardは個別引き上げ

Children's Services AwardやPharmacy Industry Awardなどでは、職務価値・賃金構造の見直しによる別の賃金変更も行われています。

Annual Wage Reviewとは別の決定が同じ時期に発効する場合があるため、「全Awardが一律4.75%だけ上がった」と理解するのは正確ではありません。

Payday Super

2026年7月1日から、雇用主のSuperannuation拠出は従来の四半期ベース中心の仕組みから、給与支払と連動するPayday Superへ移行しました。

これはAwardそのものではありませんが、給与・雇用コスト管理に大きく関係するため、Payroll Systemの更新が必要となっています。

Right to Disconnect

従業員には、勤務時間外の連絡を監視・読む・返信することを拒否する権利があり、その拒否がUnreasonableでない限り保護されます。

15人以上の雇用主では2024年8月、15人未満のSmall Businessでは2025年8月26日から適用され、2026年時点では全国制度の企業規模を問わず制度が運用されています。

Casual Employment

Casual Employeeについても、実際の雇用関係と将来の継続性を見ながらPermanent Employmentへの変更を申し出るEmployee Choice Pathwayが導入されています。

Casual Loadingだけでなく、雇用形態そのものが実態に合っているかを確認する考え方が強まっています。

意図的Underpaymentの刑事化

2025年から意図的なUnderpaymentが刑事犯罪となったことで、企業にはAward Classificationと勤務実績の管理をより厳格に行う必要が生じています。

特に複数店舗、フランチャイズ、Hospitality、Retail、Cleaning、Agricultureなど、Casual・Shift・Penalty Rateが多い業界ではPayroll Complianceが重要な経営課題です。

労働協約の重要性

賃金上昇や人手不足が続く中、Enterprise Agreementは単にAwardを置き換える制度ではなく、人材確保、Roster柔軟化、Skill Allowance、追加休暇、生産性改善を職場単位で設計する道具として重要になっています。

一方、Agreementが古くなりAward Base Rateに追い越されるケースもあるため、締結後もAnnual Wage Reviewとの比較が必要です。

主な変更・論点時期影響
National Minimum Wage $26.442026年7月最低賃金更新。
Award +4.75%原則2026年7月多数のAward Rate更新。
Payday Super2026年7月給与時にSuper拠出。
Right to Disconnect2024~25年2026年は全規模へ適用。
Intentional Underpayment2025年1月刑事犯罪化。
Casual Choice Pathway2024~25年Permanentへの変更制度。

オーストラリアの最低賃金・アワード・労働協約に関するよくある質問(FAQ)

2026年のオーストラリア全国最低賃金はいくらですか?

2026年7月1日から時給26.44豪ドル、週38時間で週1,004.90豪ドルです。

原則としてAwardまたはEnterprise Agreementにカバーされない成人従業員へ適用されます。

カジュアルの最低時給はいくらですか?

Award・Agreement Freeの成人カジュアルは、2026年7月から25%のCasual Loading込みで時給33.05豪ドルです。

Award適用者は各AwardのCasual Rateを確認します。

モダン・アワードとは何ですか?

産業・職種ごとの最低賃金と労働条件を定めた法的文書です。

最低時給、Classification、Penalty Rate、Overtime、Allowance、休憩などが定められています。

最低賃金より高い時給ならAwardを確認しなくてもよいですか?

いいえ。

AwardのClassification、土日祝Penalty、Overtime、Allowanceを含めると、全国最低賃金より高い時給でもUnderpaymentになる場合があります。

Enterprise Agreementがある場合、Awardは適用されますか?

Agreementが従業員をカバーする場合、原則としてAwardの条件そのものは直接適用されません。

ただしAgreementのBase Rateは、該当AwardのBase Rateを下回ることができません。

BOOTとは何ですか?

Better Off Overall Testの略です。

新しいEnterprise Agreementが、対象従業員を関連Modern Awardより総合的に不利にしないかFWCが確認する制度です。

雇用契約書にサインすればAwardより安い給与でも有効ですか?

いいえ。

個別雇用契約は、NESや適用Award・Agreementの最低Entitlementを下回る条件を有効な最低基準にはできません。

Annual Wage ReviewでEnterprise Agreementの給与も必ず4.75%上がりますか?

必ずしもそうではありません。

AgreementにAnnual Wage Review連動条項がなければAgreement Rate自体は自動で同率上昇しませんが、Base RateがAward Base Rateを下回ることはできません。

西オーストラリア州でも全国最低賃金が必ず適用されますか?

雇用主によります。

Pty LtdなどNational System企業にはFair Work制度が適用されますが、Sole Traderや一部のUnincorporated BusinessはWA State Systemとなる場合があります。

賃金を意図的に支払わないと刑事犯罪になりますか?

2025年1月1日から、意図的な賃金・EntitlementのUnderpaymentは一定の場合に刑事犯罪となり得ます。

Honest Mistakeまで自動的に刑事犯罪になるわけではありません。

まとめ

オーストラリアの賃金制度は、全国最低賃金だけでなく、NES、Modern Award、Enterprise Agreement、Employment Contractを組み合わせて最低労働条件を決める仕組みです。

2026年7月1日から全国最低賃金は時給26.44豪ドル、週38時間で週1,004.90豪ドルとなり、Award・Agreement Freeの成人カジュアルは25%のCasual Loading込みで時給33.05豪ドルです。

しかし豪州の多くの従業員はModern Awardでカバーされ、Classification、土日祝Penalty、Overtime、Allowanceなどによって最低支給額が全国最低賃金より高くなります。Hospitality Award Level 1では、2026年7月以降の基本時給26.44豪ドルに対し、日曜は39.66豪ドル、祝日は59.49豪ドルです。

Enterprise Agreementが適用される職場では、Agreementの賃金・勤務条件が中心になります。ただしBase Rateは関連AwardのBase Rate未満にはできず、新しいAgreementは原則としてBOOTを通じ、従業員がAwardより総合的に不利にならないことを確認されます。

2025年から意図的なUnderpaymentが刑事犯罪となり、2026年には最低賃金の更新に加えてPayday Superも開始しました。雇用主・従業員とも、毎年Award、Agreement、Classification、勤務実績を確認することが、豪州の複雑な賃金制度を正しく運用するうえで重要です。

オーストラリアの最低賃金・アワード・労働協約に関する参考情報

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